裏金は「飲食関係」に使った カネのかかる政治「今となっては何のため」、元国会議員が明かす実態
宮沢氏が支部長だった「自民党静岡県第3選挙区支部」の収支報告書(21年分)を見ると、確かに人件費として1850万円が計上されていた。 そのほかにも細かな出費が多い。備品・消耗品費(計542万円)には車のガソリン代やコピー代のほか、自撮り棒(1万7930円)やポロシャツ(12万3000円)といった記述もある。 事務所費(計444万円)には家賃や電話代のほか、労務管理事務所への顧問報酬や求人広告代も含まれていた。
人件費捻出のために寄付金集め?
こうした出費を賄うため、宮沢氏が力を入れたのが寄付金集めとパーティー券の販売だ。 収支報告書には地元の建設会社や物流会社のほか、静岡県医師連盟、静岡県石油政治連盟など業界団体の寄付がずらりと並ぶ。 宮沢氏が代表を務める別の政治団体「宮柱会」の収支報告書(21年分)には、政治資金パーティーの収入として計820万円が記載されていた。 「派閥のパーティーはノルマだけ達成すればいいや、というつもりだったんで、政治資金を稼ぐのは自分のパーティーだと思っていました」と宮沢氏は明かす。ただ、パーティー券の販売には苦労し、足りない分を自腹で埋めることもあったという。
議員バッジを失った今、収入は激減した。「生活は厳しい。蓄えを崩して、年内持つかどうかです」と力なく笑った。 「カネのかかる政治」に苦しんできたのは宮沢氏だけではない。自民党の桜田義孝元五輪担当相は23年12月、パーティー券の販売ノルマを理由に二階派を退会したと記者団に明かし、「私の場合は300枚だった。徒手空拳でここまで来たが、売るのが厳しかった」と語った。別の議員は「資産家じゃなければ政治家になれないような世の中でいいのか」とぼやいた。
派閥が残したものは
派閥ぐるみのカネ集めの果てに起きた裏金事件。宮沢氏は今、「カネのかからない政治をやりたい」との思いが芽生えているという。 政治活動をするために秘書を雇っていたはずなのに、その秘書の人件費を捻出するために寄付金集めやパーティー券販売から離れられなくなっていた。「本末転倒です」と宮沢氏は言う。 自民党は安倍派を中心に議員ら39人を処分し、このうち安倍派座長だった塩谷立元文部科学相と安倍派参院トップだった世耕弘成前参院幹事長は勧告を受けて離党した。安倍派は解散を決め、総裁選でも候補者を出していない。 かつての最大派閥に、宮沢氏は何を思うのか。「幹部がどこかで『(還流を)やめよう』と言っておけばこうはなりませんでした。安倍派は保守政治の柱だったと自負しているので、それが消えてしまったのは損失です」と振り返る。 宮沢氏はこれからも政治活動を続けるつもりだが、こう言い切った。「もう自民党には帰りません。政治不信を払拭(ふっしょく)するには、自民党政治自体を変えないといけないんです」【畠山嵩】