かのゴルディーニ製エンジンを搭載した究極のジェット
レース由来のテクノロジーである、ミッドシップレイアウトを市販車に初めて採用したのは、ランボルギーニでもロータスでもなく 今やその名を知る者も少なくなったフランスの小規模メーカー、「ルネ・ボネ」とその意思を継いだ「マトラ」であった。 【画像15枚】「マトラ」時代の「ジェット6」。1.3Lのゴルディーニ製エンジンを搭載した究極の1台。ルネ・ボネ時代はスパルタンな意匠だったダッシュパネルは、マトラでは豪華なウッド張りとされ、非常に高価だった価格にふさわしいものとなった 【輸入車的懐古勇士 1967年式 マトラ・ジェット6】 パワーユニットはルネ・ボネ時代の956cc版が廃止とされる一方、残された1108ccエンジンは、標準の60psに加えて70psのハイチューン版が追加。加えて翌66年からは、R8ゴルディーニ用OHVクロスフロー1255cc・105ps(SAE)を搭載したシリーズ最上級・最高性能モデルも追加され、それぞれ「ジェット5/5S」、「ジェット6」と命名されるが、あまりの高価ゆえに販売は振わず、67年には生産を終えてしまったのだ。 ちなみに、今回の取材に協力いただいた北関東某地在住のエンスージアストの赤いジェットは「マトラ」時代の「ジェット6」。つまり1.3L版のゴルディーニ製エンジンを搭載した最強バージョンである。ジェットとしてはまさに究極の一台とも言えるだろう。 ルネ・ボネ/マトラ時代を問わず残存台数の極めて少ないモデルゆえに、もちろん運転するのは今回の取材が初めて。でも、ゴルディーニ製4気筒エンジンの弾けるような排気音に耳を傾けつつ、か細いタイヤで重量バランスの良さを味わうという感動的な体験から、ついついこのクルマの希少性を忘れてしまいがちとなる。 しかし、世界最初のミッドシップ車を体感しているという事実に思いを馳せると、走りそのものの素晴らしさが、いっそう増幅して感じられたのである。 OWNER 北関東某県在住のエンスージアスト。フランス車やイタリア車、特にRR車など個性の強いクラシックカーに強くひかれるとのこと。また、ご家族と2匹の愛犬と過ごす時間も大切にする、なんとも素敵な紳士である。 1967年式 マトラ・ジェット6 全長×全幅×全高(mm) 4220×1500×1200 ホイールベース(mm) 2400 トレッド前/後(mm) 1250/1260 車両重量(kg) 720 最低地上高(mm) 175 エンジン種類 水冷直列4気筒OHV 総排気量(cc) 1255 最高出力(ps/rpm) 105/6800 最大トルク(kg-m/rpm) 11.9/5000 圧縮比 10.5:1 トランスミッション 4MT サスペンション 前後とも独立ダブルウイッシュボーン・コイル 初出:ノスタルジックヒーロー2019年6月号 Vol.193 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
Nosweb 編集部