明豊、強豪横浜を圧倒 三回の猛攻、流れ一気に /大分
<センバツ甲子園> 「優勝候補に打ち勝った!」--。10年ぶり3度目の春の甲子園で、初の4強入りを目指している明豊ナイン。自慢の強打が大会屈指の左腕・及川雅貴投手(3年)の速球を見事に捉える。三回に攻略し、甲子園のスコアボードに明豊の得点を表す数字が次々に加えられていった。終わってみれば、12安打13得点。4点のビハインドも気にしない明豊の猛打に、一塁側アルプススタンドは「ベスト4以上を狙える」「次戦も打ち勝つぞ」と大いに沸いた。【田畠広景、高井瞳】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 ▽1回戦 明豊 005410030=13 310000100=5 横浜 明豊の打線が4点を追う三回表、相手投手に襲いかかった。 無死から連続四球で一、二塁の好機をつくる。打席に入ったのは主将の表悠斗選手(3年)だった。序盤、苦しむ若杉晟汰投手(2年)の姿をみていた。エースは二塁上にいる。反撃への絶好の場面だ。「あいつをホームに迎え、楽にしてやりたい」。直球を左前に運び、まず1点。表主将の父雅之さん(47)は「しぶとい打撃だったね」とほめた。 主将のナインに対する思いは、チームに広がった。反撃の口火となり、布施心海選手(2年)、野辺優汰選手(3年)の長短打で同点に。観客席で跳びはねる生徒の姿も。そして、青地七斗選手(3年)の適時打で一気に勝ち越した。 野辺選手の父英一郎さん(42)は青いメガホンを力強くたたいて喜んだ。「明豊らしいつなぐ野球だった」。勝ち越し打の青地選手の父久友さん(38)は「練習が100%できていたら、甲子園の神様がほほ笑んでくれると思った。100%頑張ったんでしょうね」。兄斗舞さん(18)は「大満足です」と目を細めた。 明豊の勢いは止まらない。四回に敵失で1点を追加すると、2死満塁で藪田源選手(3年)が走者一掃の三塁打。母美保さん(52)は「2打席凡退だったので祈るような気持ちでした。ほっとしました。とにかくこのまま楽しんでプレーしてほしい」と息子がいるグラウンドを見つめた。 八回には2死満塁で、またも藪田選手が3点適時二塁打。母美保さんは涙ぐむ。そして隣にいた父文明さん(49)は「ただただ抜けてくれと願った」と満面の笑み。 次は、大会第7日の第1試合(午前9時開始予定)で札幌大谷(北海道)と対戦する。肩を組んで高らかに校歌を響かせる中、表主将の父雅之さんは「名門に勝ったので、勢いに乗って、さらなる上を目指してほしい」と期待した。横浜を撃破した明豊の「つなげる打線」は選手、応援団の気持ちを一つにしていた。 ◇チア応援華やかに ○…明豊のチアリーディングの14人が一塁側アルプス席で華やかな応援を披露した。10年ぶりのセンバツ出場となるチームを盛り上げようと、2週間前から20曲以上の踊りを練習した。ピンクの手袋とぽんぽんを使って春らしさを表現。「春に桜が咲くように、選手たちも甲子園で花を咲かせてほしい」と手作りの桜の花の髪留めを付けた。キャプテンの木村舞衣さん(3年)は「少しでも選手の力になれたらうれしいです」と話していた。 ◇お守りに願い込め ○…明豊ナインと保護者らでつくる「野球部白球之会」は、子と親で一緒のお守りをバッグなどに付け、一心同体となって戦った。ユニホームの形の布地に、「必勝」とそれぞれの選手の名前が書かれている。2安打を放った布施心海選手(2年)の母ゆかりさん(43)は「打撃で活躍してほしい」。お守りに込めた子と母の願いが甲子園で実現した。 ……………………………………………………………………………………………………… ◆青春譜 ◇ロングリリーフ成功に手応え 大畑蓮投手=3年 自慢は地肩の強さだ。幼い頃から自信があった。中学に入れば投手になった。それが高校になれば話が違った。速くもない直球が狙われ、打ち込まれた。でも、レベルの違いを知っても、マウンドから去りたくはなかった。下半身を強化し、直球は10キロアップ。川崎絢平監督が「ダブルエース」と太鼓判を押す成長株になった。 つらかったのは高校1年の紅白戦。ヒット、ホームラン、ヒット……。130キロ程度の直球は「打ちやすい」とまで言われた。「ならば打てない速球を」。奮起し、筋力トレーニングに励み、徐々に球は速くなった、そして、打者を幻惑する変化球も身につけた。 しかし、2年の夏の甲子園の県大会で肩を故障した。「まともに野球ができなくなるのでは」。よぎる不安を強い精神力ではねのけた。肩周辺を筋力トレーニングで鍛え直し、冬は下半身も強化した。そして、直球は最速142キロを計時した。 初戦、先発の若杉晟汰投手(2年)は相手打線につかまり三回で降板。「俺に任せろ」と声を掛けると「任せます」と頼られた。五、六回には満塁のピンチもあったが、「点差もある。打たれてもいい」と、ここでも前向きに切り抜けた。 苦難を乗り越えて手にした甲子園の勝利。普段から若杉投手に「頼ってくれ」と声をかけている。「あいつと一戦一戦集中して投げていきたい」。勝利の喜びよりも、下級生のエースとともに勝利を願う、ひたむきな思いをみせてくれた。【田畠広景】