NEC、新共通基盤「BluStellar」を発表--創業125年目に“第3.5の創業期”へ
BluStellarでは、「ビジネスモデル」「テクノロジー」「組織/人材」の3点から進化を遂げたとする。これは、NEC Digital Platformでも取り組んできた項目だが、より広範な要素を盛り込んでいる点が異なる。 ビジネスモデルでは戦略コンサルティング、サービスデリバリー、運用・保守の全てのプロセスでのAI活用を打ち出した。また、現在700人の戦略コンサルタントを2025年までに1000人に拡大するほか、データサイエンティストの知見を持つAIコンサルタントを新たに100人育成し、企業の構想策定から実装までの対応スピードを高める。 特に構想策定でデータに精通したAIコンサルタントが加わり、実装までのスピードを速め、新たな価値創造を可能にするという。今後はあらゆる領域でAI活用が進み、AIコンサルタントの役割がますます重要になるため、吉崎氏は「戦略コンサルタントの多くをAIコンサルタントにしたい」と述べた。 2つ目のテクノロジーでは、AIとセキュリティをキーテクノロジーに捉え、NECが創業125年間培ってきたハードウェアとソフトウェア、ネットワーク技術と組み合わせた提案が、BluStellarの価値になるとする。NEC独自の生成AI「cotomi」で業種や業務に特化した大規模言語モデルを用意し、業務支援を効率化する。さらに、顧客の拠点に設置可能な「cotomi Appliance Server」も提供し、機微データを扱うユーザーに選択肢を提案している。 森田氏は、「AIは基盤モデルだけでは何もできない。これからは基盤モデルからシステムの話に移るだろう。AIを業務に適応していく激変の時代が訪れる中で、NEC内にもAIに関して尖った知見を持つ人間を増やしていきたい」とした。セキュリティについては、NEC独自の脅威データベースと生成AIを組み合わせて、高精度なサイバーインテリジェンスを短時間に構築。サイバー攻撃への防御力を高めている実績を生かし、新たな知見として提供していくことになるという。 さらに、研究開発部門と事業部門のシームレスな連携を強化し、先端技術の市場投入を加速するために、NEC グローバルイノベーションビジネスユニット Corporate SVPの山田昭雄氏が、研究開発、事業開発、商品化までを一手に担う体制に移行する。 吉崎氏は、「研究開発部門が持つ要素技術をいかに速く商品化、サービス化できるかが競争力に直結する。新体制で先端技術の市場投入をより速められる」と語り、「さまざまなテクノロジーが生まれ、変化しながら、デジタルが隅々に行き渡る時に、NECは何ができるかをBluStellarで体現したい」と続けた。 3つ目の組織/人材では、AWSやMicrosoft、Oracle、SAPなどハイパースケーラーとの戦略的協業をさらに強化するほか、BluStellarでは約400社のパートナーとの共創をスタートし、NECの顔認証やエッジプラットフォーム、ハイブリッドクラウドなどを活用した共創パートナープログラムを展開する。また、社内のDX人材を2025年度に1万2000人とする新たな目標も発表した。 NECは、BluStellarの発表に合せて、「Value Driver」という新たな言葉も使う。NECの新たな姿勢を表現したものになるという。吉崎氏は、「これまでのNECは、システムインテグレーターとしてハードウェアやソフトウェア、サービスを提供してきたが、BluStellarへの進化で、AIによる自動化、自律化、標準化といった新たなバリューを届ける会社になる。その決意を示したのがValue Driverだ」と述べた。 今後は、ビジネスモデルやテクノロジーに応じた販売方法に変え、組織と人材で営業のケイパビリティーを変えていくとする。ビジネスプロセスの全てでAIを活用して変化を促し、Value Driverを実現できるとしたほか、従来型のシステム構築ビジネスを進化させて、顧客価値を最大化するとした。BluStellarは、NECの提案・提供手法とデジタル分野での役割自体に変化を及ぼすというわけだ。 森田氏は、BluStellarを「NECのDX事業で非常に重要な発表」と表現しながら、同社史上でも重要なマイルストーンだと示した。「NECは、日本初の外資系ベンチャー企業で1899年に創業し、電話を日本で普及させることを目指した。1977年は第2の創業として『C&C(コンピューターとコミュニケーション)』を提唱し、情報通信産業の担い手に変身した。2013年は、第3の創業として、自らの存在価値を社会価値創造企業に再定義して、DXを強力に推進してきた。今は第3の創業の転換期。AIをはじめ先端技術とともに提供するDXを新たなステージに進化させていく」とする。いわば、“3.5世代”ともいえるフェーズに入る。 NECは、NEC Digital Platformの経営指標として、2025年度に売上収益で3284億円、調整後営業利益で430億円、調整後営業利益率で13.1%を掲げてきた。現時点でこれらの数字をBluStellarの目標値として流用する。だが、森田氏は「BluStellarは中期経営計画達成に向けた成長エンジンで、同計画の数字のコミットをより深めるもの」と語る。新指標が示される可能性は捨て切れない。 Value DriverにギアチェンジしたNECが、BluStellarで成長戦略を描き直すことになるのか――創業125年目のNECが大きな転換点を迎えていることは間違いない。