《ホンダと経営統合へ》自力での再建が困難になった日産自動車の深刻な経営状況 かつて経営コンサルを務めた大前研一氏が「もし私が社長を頼まれても、絶対に引き受けない」と語る理由
日本だけではなく世界で自動車メーカー“淘汰の時代”に突入
さらに深刻なのは、いま自動車業界は根本的な変化に直面し、“淘汰の時代”に突入していることだ。実際、日産だけでなく、多くの自動車メーカーが危機的な状況に置かれている。 たとえば、本連載で述べたように、欧州最大の自動車メーカーであるドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループは、収益性改善のためにドイツ国内の工場を閉鎖して最大3万人の人員削減を行ない、新車販売の3割を占める中国でもリストラに踏み切る方針を示すという苦境に立たされている。 ドイツ勢は高級車の代名詞であるメルセデス・ベンツとBMWも、2024年上半期(1月~6月)は世界販売台数や営業利益が前年同期より減少している。いずれも市場競争が激化し、EVや自動運転への投資が嵩む厳しい経営環境の下で四苦八苦しているのだ。 自動車メーカーは世界的な再編が進み、北米はGM(ゼネラルモーターズ)などビッグ3とテスラの4社、ドイツはVW、メルセデス・ベンツ、BMWの3社、フランス・イタリアはルノー、ステランティス【*】、フェラーリの3社しかない。イギリスのジャガーはインドのタタ・モーターズ、スウェーデンのボルボは中国の浙江吉利の傘下に入った。 【*ステランティス/多国籍自動車メーカー。フランスの「プジョー」「シトロエン」を擁するグループPSAと、イタリアの「フィアット」「アルファロメオ」「マセラティ」などのブランドを持つFCAが合併して誕生】 一方、日本はまだ10社が存続しているが、このまま生き残れる保証はない。 さらに5~10年後には、自動運転がレベル5(完全自動運転)の時代を迎える。レベル5になれば、私の計算では自動車の台数は現在の10分の1で事足りる。 このように見てくると、単独で生き残ることができる日本の自動車メーカーは、囲碁で言えば全陣地に布石を打っているトヨタと、インドに強く日本国内でも販売台数2位のスズキくらいかもしれない。 【プロフィール】 大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『新版 第4の波』(小学館親書)など著書多数。 ※週刊ポスト2024年12月27日号