米住宅ローン金利上昇、始まったばかりの住宅市場回復に水指す恐れ
(ブルームバーグ): 米国ではほんの短期間、住宅購入者にようやく好機が訪れたように思われていた。住宅ローン金利は9月に2年ぶり低水準に低下し、住宅市場は活気づき始めていた。
しかし、ここ数週間で住宅ローン金利は上昇し、ある指標では7%を上回った。このため、始まったばかりの住宅販売の回復が今後も続くかどうかに疑問符がついている。
市場が再び新たな展開を見せているため、現在は住宅購入者にとって難しい時期にある。また、来年に金利低下による競争激化が見込まれる中、取引を成立させようとする購入者がどれほどいるのかも不明だ。
住宅ローン金利上昇を背景に、需要を測る指標の一つ、全米抵当貸付銀行協会(MBA)発表の住宅ローン申請指数は、10月の大半の週で低下。ただ、25日終了週は小幅上昇した。
9月に約4年ぶりに利下げを決定した米連邦公開市場委員会(FOMC)は、来週の大統領選後に会合を開く。前回のFOMC以降に10年債利回りは上昇しているが、その理由の一つは、経済指標が良好なため、今後の大幅利下げの可能性が疑問視されていることだ。連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)コア価格指数は、9月に前月比で4月以来の大幅上昇となった。
住宅ローン金利上昇は、住宅購入者にとってダブルパンチとなっている。住宅の値ごろ感が損なわれる上に、物件を売りに出すのをためらう住宅所有者が増えるためだ。住宅所有者が現在の低い住宅ローン金利を失うのを嫌って売却を渋る、いわゆるロックイン効果によって、住宅供給は逼迫(ひっぱく)した状態が続いている。
ブリーン・キャピタルの債券戦略責任者、スコット・ブクタ氏は「住宅市場を活性化させるには、住宅ローン金利が5.5%を下回る必要があると考えている。しかし、恐らくリセッション(景気後退)に陥らない限り、そうなることは当分ないだろう」と話す。
購買力の低下は、特にボストン地区のような高級住宅市場で顕著となっている。マサチューセッツ州ウォルサムで銀行の住宅ローン業務を担当するシャント・バノシアン氏にとって、典型的な顧客は100万ドル(約1億5200万円)の物件を購入する人々だ。同氏によると、最近のピークである9月に比べ、住宅ローン申請件数は約20%減少しているという。