熊野古道中辺路・赤木越を歩き、小栗判官と照手姫の舞台、湯の峰温泉へ
なおも尾根道を進み、柿原茶屋跡へ。「ユノミ子、か平」と彫られたユニークな道標石と出合ったのち、地獄坂を下る。地獄坂は湯煙に中に落ち込んでいく様を地獄に見立てた呼び名とされる。やがて硫黄の匂いとともに、湯の峰温泉の中ほどに降り立つ。 湯の峰温泉には、薬師如来を本尊とする東光寺が建ち、隣に世界遺産登録のつぼ湯がある。ここからバスに乗車して帰路に就くこともできるが、今回はさらに東光寺の裏手から大日峠を越えて熊野本宮大社へと向かう。
大日峠には、左甚五郎(ひだりじんごろう)ゆかりの鼻欠(はなかけ)地蔵と呼ばれる磨崖仏がある。峠をあとに月見ヶ丘神社に下る。しばらくして、眼下に大斎原(おおゆのはら)を望み、さらに下って大日越登り口に降り立ち、大斎原に向かう。 大斎原は、熊野川・音無川・岩田川の合流点の中州にあたる場所で、かつて熊野本宮大社のあった所だ。参詣者は音無川で最後の水垢離(みずごり)を行なって身を清めたのち、神域を訪れたという。大斎原の大鳥居を通り抜け、本宮大社前バス停へ。バス停前の参道の石段を登って、熊野本宮大社に参拝したのち、本宮大社前バス停に戻る。
------------------------- 児嶋弘幸 1953年和歌山県生まれ。20歳を過ぎた頃、山野の自然に魅了され、仲間と共にハイキングクラブを創立。春・夏・秋・冬のアルプスを経験後、ふるさとの山に傾注する。紀伊半島の山をライフワークとして、熊野古道・自然風景の写真撮影を行っている。 分県登山ガイド『和歌山県の山』『関西百名山地図帳』(山と溪谷社)、『山歩き安全マップ』(JTBパブリッシング)、山と高原地図『高野山・熊野古道』(昭文社)など多数あるほか、雑誌『山と溪谷』への寄稿も多い。2016年、大阪富士フォトサロンにて『悠久の熊野』写真展を開催。 -------------------------
写真・文=児嶋弘幸