失明にもつながる“緑内障”予防のための「眼圧を下げる方法」を眼科医に聞く
緑内障予防・緑内障の症状を進行させないために、日常生活でできるセルフケアはある? 眼圧の高さは目薬以外でも対策できる?
編集部: 緑内障は予防することができますか? 蒲山先生: 原因が明確でないため、特に有効な予防法はありません。最も効果的なのは、定期的に眼科検診を受けて早期発見に努めることです。日本人は40歳を過ぎると有病者の割合が高くなることがわかっており、さらに、緑内障の初期や中期では自覚症状がないため自分で気づくことがほぼ不可能なのです。 編集部: 緑内障にかかりやすい人はいるのですか? 蒲山先生: 近視が強い人や血縁者に緑内障の方がいる人、糖尿病の人はリスクが高いと言われています。そのほか、目に外傷を受けたことがある人や、別の病気でステロイド薬を長期間投与された経験がある人は、気づかないうちに眼圧が高値になっていることがあるため、一度健診や眼科受診をすることをおすすめします。 編集部: 緑内障を発症した場合、進行を抑制することはできるのですか? 蒲山先生: 眼圧(目の内圧)を下げることが現在唯一の治療法です。基本的には目薬による薬物治療を行うことで、進行の抑制が期待できます。毎日1~2回の点眼を行うことで眼圧を調整します。ただし閉塞隅角緑内障の場合は、急激に眼圧が上がることもあるため、レーザー手術などを行う場合もあります。 編集部: 緑内障を進行させないために、日常生活で気を付けることはありますか? 蒲山先生: 一般的に「眼圧を上げる行為」と「目の血流を悪くさせる行為」を避けることが大切です。睡眠中は基本的に眼圧が高くなることが知られていますが、枕が高い、うつ伏せ寝などの習慣は眼圧や血流にさらに悪影響があるといえます。そのほか、「ネクタイを強く締めすぎる」「ゴーグルなどで目を長時間圧迫する」「かゆみなどで目を強くこする」「急に水分を多量に摂取する」などを行うと眼圧が上昇すると言われています。 編集部: 日常的な習慣のために、眼圧が高くなることがあるのですね。 蒲山先生: そうです。あまり神経質になる必要はないですが、できるところから改めていくと良いですね。枕は15度くらいの高さがおすすめです。そのほか、喫煙やアルコールの多飲、睡眠時無呼吸症候群などと緑内障の関係も指摘されています。 編集部: 現在、緑内障を発症する人が増えていると聞きました。 蒲山先生: はい、現在は高齢化が進んでいることもあり、緑内障の患者数が増えています。緑内障は日本における失明原因の第一位とされています。しかし早期に発見して適切に治療を続ければほとんど失明することなく、一生涯視力を維持することも可能ですから、定期的に検査を受けるようにしましょう。 編集部: 早期に発見して治療を開始すれば、失明の危険を減らせるのですね。 蒲山先生: はい、さらに緑内障の治療で特に重要なのは治療を「継続する」ということです。緑内障は自覚症状がないため、末期に至るまで悪化しているかどうかも患者さんはわかりません。そのため治療を自己中断してしまう人が非常に多いのです。 編集部: しかしそうなると、失明の危険が上がるのですね。 蒲山先生: そうです。治療の自己中断が緑内障の失明率を上げていることは間違いありません。患者さん自身が治療の必要性を理解し、積極的に治療に参加することを「アドヒアランス」といいますが、緑内障の治療において患者さんのアドヒアランスの向上で治療成績が有意に向上することは多くの研究で証明されています。もしも早期に緑内障と診断された場合には、「適切な治療を開始できるチャンス」とポジティブに捉え、積極的に治療に参加してほしいと思います。