セ・パ共に大型連敗の目立つ異常事態はなぜ起きているのか
ロッテはデスパイネに代わる新外国人として期待したダフィ、パラデスの2人が本番に入ると、オープン戦とはまるで違う配球で攻められ打てなくなり、角中の故障なども重なり、チーム打率が一時期2割を切った。加えて先発陣では、昨年貯金を稼いだ石川歩が“WBC後遺症”のせいか不振、内―益田の中継ぎ、抑えも機能せずに、鈴木氏が指摘する“輪”は、すべて崩壊していた。 そのチームを構築する“輪”は故障者が出ることによって大きく壊れる。 今季の大型連敗を生み出した背景には、異常なまでの主力の故障者が見逃せない。 日ハムは、大谷の不在が大きく響いた。有原の序盤の不調、4番・中田の“WBC後遺症”による不振で、投打のバランスが崩れた。近藤という4割打者と、西川という機動力の軸は残っていて大型連敗を止める要素はあったのだが、その近藤まで故障リタイアした。 ヤクルトも、川端、畠山、雄平らの相次ぐ主力の故障者に悩まされている。トリプルスリーの山田も不振で出塁率も下がって足も使えずに打線も機動力も崩壊。元々、先発には不安があったが、中継ぎで考えていたドラ2の星まで先発に回すことになり、皺寄せが生まれバランスが崩れた。困り果てた真中監督は、小川をストッパーに配置転換したが、2試合続けて失敗。再び先発に戻したが、まさに泥沼の“負の連鎖”である。 大型連敗が起きる理由のもうひとつに、この“負の連鎖”がある。 ひとつの輪が崩れると他の輪への悪影響が生まれるのだ。 チームが打線不振に陥ると、投手陣が「1点もやれない、先に点をやれない」と、ますますメンタルで追い込まれ、ピッチングに余裕がなくなり、思い切りが消えコースを狙いすぎるためにカウントが悪くなり、甘くいかざるを得なくなったボールを打たれるという“負の連鎖”が起きる。 「絶対エースのいるチームは連敗がない」という格言もあるが、それが、巨人の菅野、ロッテの湧井のようにチームに一人しかいないとなると“負の連鎖”の波に飲まれる可能性が高まる。 「3点以内に抑えて負けたのなら、あとは打者の責任。査定に一切、影響させないし、責任も負わないから、気にせず投げろ」と、フロントと現場が一体になって、チームメンタルを年俸のかかわる査定から根本的に変えていかない限り、そういう“負の連鎖”を止めることも難しくなるのだ。 大型連敗は、そもそも故障者で出るリスクを念頭におきチーム編成をしていたのか、というリスクマネジメントの問題に行き着く。巨人は鹿取GMを就任させて、フロント変革から手をつけたが、143試合という長丁場のペナントレースを、チームバランスを崩さずに戦い抜くためには、現場の采配だけでは難しい。故障の防止策や、リスクマネジメントも含めて、オフの段階から大型連敗を生む種が撒かれていたのかもしれない。