伝統的酒造りが無形文化遺産に 長崎県内の関係者、技術継承の決意新た 販路、消費拡大に意欲
日本酒や本格焼酎などの「伝統的酒造り」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。長崎県内には23の伝統的な酒蔵(県酒造組合組合員)があるが、関係者は「日本独特の文化が世界に認められた」と登録を喜び、技術の継承や販路拡大に意欲を見せた。 「率直に誇らしい。若い人が興味を持ち、雇用拡大にもつながれば」。潜龍酒造(佐世保市江迎町)の杜氏、中山直さん(55)は新酒の仕込みに追われながら朗報に顔をほころばせた。 同酒造は県内最古の酒蔵の一つ。平戸藩の命を受け1688(元禄元)年に酒造りを始めた。米農家から酒販店まで、酒に関わる全ての人に感謝を込めて酒を仕込む「和醸良酒(わじょうりょうしゅ)」の心がけは昔から変わらない。 かつては北松小値賀町などから杜氏や蔵人が酒造りの季節に酒蔵に泊まり込み、仕込みなどに当たっていたが、それも過去の話。職人の後継者不足で、今は社員4、5人が作業を担う。統括部長でもある中山さんもその一人。「小値賀杜氏」の技術を受け継ぎ、2017年から“味の責任者”として蔵に立つ。「後世に残していかないと」と決意を新たにした。 登録は消費拡大への期待も。県酒造組合によると、22年度の県産酒の県内シェアは日本酒で20・8%、本格焼酎で16%。杵の川(諫早市)の杜氏、瀬頭りつ子さん(48)は若者にもアプローチしようと、ロックや炭酸割りで飲める初心者向けの日本酒や、食べ物とのペアリングなどをイベントを通じて発信している。「果物のような香り、甘み、酸味を米からつくるという技術は奥が深い」と酒造りの魅力を語り、「スポットが当たるきっかけになれば」と登録が追い風になることを期待した。 海外の販路拡大を目指す動きも出ている。酒造りが盛んな壱岐市。市内には七つの酒蔵があるが、フランスで先月開かれた国際的な食と物産の展示会に初めて合同出展し、「壱岐焼酎」をアピールした。 同組合会長で玄海酒造(同市)の山内昭人社長は「海外に日本独特の文化を知ってもらう絶好の機会。ヨーロッパなどへの輸出に向け取り組みを強化していけたら」と意気込みを語った。