『プロセカ』の軌跡と成長に浸る特別な時間――ゲームと現実が溶け合う『セカイシンフォニー2024』レポート
6月8日、『セカイシンフォニー2024』横浜公演がパシフィコ横浜国立大ホールにて行われた。 【写真】『プロセカ』の世界と現実が溶け合う『セカイシンフォニー2024』横浜公演の様子 ※本稿は横浜公演のセットリストのネタバレを含みます。また、大阪公演では演奏曲が一部異なる場合があります。 『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下『プロセカ』)の楽曲をオーケストラとスペシャルバンドで奏でる『セカイシンフォニー』。2021年の初開催以来毎年行われている本イベントも、今年で4年目の開催となった。 本公演の楽しみどころはもちろん、ゲーム内に実装された楽曲をオーケストラアレンジの生演奏で聴くことができるという部分にあるが、それだけではない。 イベントストーリーと楽曲がリンクすることでゲームに登場するキャラクターの成長を感じられる臨場感と高揚感は、ここでしか味わえない感覚だろう。そして後半では、ゲーム内ユニットのひとつ、Vivid BAD SQUADの声優を務めている4名もステージに登場。栗田博文の指揮のもと、東京フィルハーモニー交響楽団とセカイシンフォニースペシャルバンドとともに、スペシャルなコンサートが繰り広げられた。 『プロセカ』のユーザーであれば聴き馴染みのある、タイトル画面のBGM「New Landscape(作曲:直江 禎喜)」の演奏で幕を開けたこの日の公演。ステージ後方のスクリーンにはタイトル画面が映し出され、ゲームの世界へと誘われるよう。オーケストラの柔らかな音色が駆け抜けていく音像には迫力があり、スペシャルバンドも参加することで音色にカジュアルな印象が加わっていた。 「早速、あの子たちの思い出を一緒に辿っていこう」という初音ミクの導きより、ゲーム内に登場する5組のユニットがクローズアップされるコーナーへ。 演奏前には各ユニットのストーリーの中でも印象的なシーンがダイジェスト的に放映され、それから各メンバーのセリフに重なるように演奏が始まり、ストーリーへの書き下ろし楽曲へと繋がっていった。ホールの音響で聴くセリフは映画のようで、感情が揺れ動くシナリオがさらにドラマチックに演出される。ストーリーと楽曲がシームレスに繋がることで、ストーリーの舞台であるゲームの世界と、演奏が繰り広げられる現実世界の境界が溶けていくような感覚に陥った。 Leo/needのコーナーでは、望月穂波が活動に対する想いを表明するシーンから、「STAGE OF SEKAI(作詞・作曲:針原翼(はりーP))」へ。希望が広がっていくようなニュアンスが弦楽器の数々によって表されており、原曲の推進力がバンドによって表現されている。彼女たちの動的な原動力を表すような「purpose(作詞・作曲:doriko)」へと続いた。 MORE MORE JUMP!のコーナーから披露された「はぐ(作詞・作曲:MIMI)」は、柔らかな優しさがありながらも力強い音色で奏でられる。その音色は、MORE MORE JUMP!のメンバーの性格や想いと一致するようだ。間奏のサックスソロなど、オーケストラオリジナルのアレンジも新鮮。「JUMPIN' OVER !(作詞・作曲:r-906)」ではアイドルらしくキュートな音色が飛び交い、ユニットの性格を表現していた。 ショーユニットゆえ、オーケストラの壮大な印象と相性がいいワンダーランズ×ショウタイムからは、希望に満ちた展開が楽しい「キラピピ★キラピカ(作詞・作曲:nyanyannya(大天才P))」、スケールの大きさがオーケストラによってさらに強調された「箱庭のコラル(作詞・作曲:koyori)」を演奏。25時、ナイトコードで。からはエレキギターとベースの映える「キティ(作詞・作曲:ツミキ)」、生演奏の繊細な息遣いが感情の機微を表す「演劇(作詞・作曲:ナノウ)」へと続いていく。ユニットによって得意とする音楽ジャンルが異なるゆえ、アレンジやフィーチャーされる楽器が異なるのも楽しみのひとつだ。 また、演奏中、スクリーンには2DMVや3DMV、メンバーのイラストが映されていたが、普段プレイしている端末で見ても美しく感じるイラストは、会場のスクリーンで見るとより魅力的で、高揚感や気迫を感じさせた。 耳と目をフル活用し、それぞれのユニットのターニングポイントを振り返りながら演奏に身をゆだねたコンサート前半。演奏を通して彼女たちの生きる場所に踏み込むような、没入感のある体験であった。 休憩を挟んだ後半では、スペシャルゲストとしてVivid BAD SQUADの声優を務める秋奈(小豆沢こはね役)、鷲見友美ジェナ(白石杏役)、今井文也(東雲彰人役)、伊東健人(青柳冬弥役)の4人が登場。 ステージ上での生アフレコから、イベント『Kick it up a notch』挿入歌となっているこはねのソロ曲「Traits(作詞・作曲:Yisoch)」を披露。途中からは4人が揃うスペシャルアレンジとなった。 本公演のサブビジュアルと同じ衣装を着た4人は、オーケストラの演奏とともに「ひつじがいっぴき(作詞・作曲:Peg)」をクールに披露。推進力のある「ミライ(作詞・作曲:有機酸)」、ハーモニーを聴かせた「仮死化(作詞・作曲:遼遼)」、歌声から情熱がほとばしった「烈火(作詞・作曲:niki)」をメドレーで続ける。Vivid BAD SQUADはEDM調の楽曲が多いユニットだが、オーケストラアレンジによるゴージャスな演奏もぴったりだ。演奏の臨場感と声優4人による歌声の熱情が呼応し合い、オーケストラコンサートとは思えない熱さが会場にこみあげていた。 その後、オーケストラとバンドのみのアレンジで、ゲームに実装された楽曲をメドレー形式でパフォーマンス。ときにメロディアスな弦楽器が、ときに可愛らしいフルートが、ときに爆発力を持ったバンドが牽引するアレンジで、カラフルな演奏を届けた。 会場の鳴りやまぬ拍手に応え、公演はアンコールへ。ゲストの4人が再び登場し、「Beyond the way(作詞:q*Left、作曲:Giga)」を披露。原曲のビート感とブラス、ストリングスの迫力で会場を高みへと連れていく。 そしてミクの「これまでのあの子たちの軌跡と、未来への歌」との言葉から、3周年アニバーサリーソング「NEO(作詞・作曲:じん)」に続き、公演は大団円へ。これまでの軌跡を振り返るようなアニメーションMVと共に、疾走感と希望が満ち満ちた演奏が届けられた。 これまで『プロセカ』ユーザーが見守ってきたキャラクターたちの成長をひしひしと感じられた本公演。ときに痛みや悲しみ、苦しみを伴いながら乗り越えてきた数々の思い出や出来事が、生演奏、生歌唱を通して共有されるような感覚があった。 そして我々はこの先も、ゲームのユーザーとして彼/彼女たちの物語を見届けていく。次回の『セカイシンフォニー』の開催時までに、彼らがどんな出来事に出会い、コンサートを通してどんな思い出や感情を振り返ることができるのか、今から楽しみでならない。 ■セットリスト 1.New Landscape(作曲:直江 禎喜) 2.STAGE OF SEKAI(作詞・作曲:針原翼(はりーP)) 3.purpose(作詞・作曲:doriko) 4.はぐ(作詞・作曲:MIMI) 5.JUMPIN' OVER !(作詞・作曲:r-906) 6.キラピピ★キラピカ(作詞・作曲:nyanyannya(大天才P)) 7.箱庭のコラル(作詞・作曲:koyori) 8.キティ(作詞・作曲:ツミキ) 9.演劇(作詞・作曲:ナノウ) 10.Traits(作詞・作曲:Yisoch) 11.ひつじがいっぴき(作詞・作曲:Peg) 12.メドレー:ミライ(作詞・作曲:有機酸)~仮死化(作詞・作曲:遼遼)~烈火(作詞・作曲:niki) 13.Ready Steady(作詞:q*Left、作曲:Giga) 14.メドレー:抜錨(作詞:ナナホシ管弦楽団、作曲:岩見 陸)~きゅうくらりん(作詞・作曲:いよわ)~愛して愛して愛して(作詞・作曲:きくお)~マーシャル・マキシマイザー(作詞・作曲:柊マグネタイト)~KING(作詞・作曲:Kanaria) 15.Beyond the way(作詞:q*Left、作曲:Giga) 16.NEO(作詞・作曲:じん)
村上麗奈
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