ゆず×ゆりやん、AKB48×ノブコブ吉村、浜崎あゆみ×熊プロ……芸人出演MVの魅力は“ギャップ”と“人間味”?
ゆずが7月30日に公開した「伏線回収」のMVが、150万回再生を超える反響を集めている(8月30日時点)。同MVは、テレビで見かけた寿司職人と恋に落ちた女性が、やがてその寿司職人のもとに弟子入りする物語。寿司職人役を務めるのは、“Crazy sushi chef”の異名で話題となっている日下部徹哉。日下部が寿司を提供する際の独特な手の形をハートマークになぞらえ、女性との恋愛成就を表現しているところは見事な着眼点である。 【画像】ゆず、Kアリーナ横浜で見せた究極のエンターテインメント そんな同MVで女性役を演じたのが、お笑い芸人のゆりやんレトリィバァだ。ゆりやんは2024年内にアメリカへ拠点を移して活動することを先日発表し、その飽くなき挑戦心が賞賛されている。本作で彼女が演じた女性も、叶えることが難しそうな恋愛であっても、自分でチャンスを作り出すなどして、幸せを貪欲に掴もうとしていることから、ゆりやん自身のチャレンジ精神と重ねて見ることができる。そもそも寿司職人役の日下部も、その名が海外まで届いている寿司職人。ゆりやんが目指すべき方向性を実現した一人であることから、今回の共演も納得できるものがある。 1981年にMTVが生まれ、以降、ミュージシャンの音楽と物語性を持った映像をマッチングさせるMVの影響は日本でも徐々に広がっていった。多くの作品は、まずそのミュージシャンが出演し、さらに視聴者に物語性をしっかり伝えるためにプロの俳優らが共演する形が主流だった。 ただ、日本ならではの動きも見られた。とんねるず、浜田雅功(ダウンタウン)をはじめとしてお笑い芸人がCDをリリースして大ヒットさせたり、音楽番組の司会を山田邦子とコント赤信号の渡辺正行(TBS系『突然バラエティー速報!!COUNT DOWN100』)、ダウンタウン(フジテレビ系『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』)、とんねるずの石橋貴明(TBS系『うたばん』)らが担当したり、『THE夜もヒッパレ』(日本テレビ系)ではミュージシャンにまじってお笑い芸人が多数出演したりするなど、日本では音楽とお笑いが非常に近い距離にあったのだ。そういったことから、俳優だけではなく、お笑い芸人がMVに起用されることも増えていった。 なかでも2000年代、映画『ナイン・ソウルズ』(2003年)などで俳優としての評価も高かった板尾創路のMV出演はかなり注目された。中でも、太陽族「旅立ち」(2005年)のMVでは先生役を務めて、視聴者の涙腺をゆるませる名演を披露した。2022年には、変態紳士クラブ「溜め息」のMVに出演。ネクタイをきっちり締めた真面目そうな会社員が飲み会の席でストレスを少しだけ発散させる模様を品好く表現していた。かつてのMALCOの「男はバカなのか俺がバカなのか」(2005年)、「男だ☆光るぜ」(2006年)などのMVでの感情を揺さぶる演技もそうだったが、板尾が出演することで、そのMVのドラマ性がグッと深まるのだ。 お笑いをやっているときとは雰囲気が違う、という点で興味深いMV出演を果たしていたのは、平成ノブシコブシの吉村崇である。結婚式がテーマとなったAKB48の「しあわせを分けなさい」(2016年)のMVでは、『AKB48 選抜総選挙』で2連覇(当時)を果たし、同曲のセンターを務めた指原莉乃の新郎役を演じた。このときの吉村は“破天荒”まっさかり。MV公開前年の2015年には、『FNS27時間テレビ めちゃ×2ピンチってるッ! 本気になれなきゃテレビじゃないじゃ~ん!!』(フジテレビ系)で約2000万円の高級愛車のボディに笑いのために飛び込んだりして傷をつけるなど、大暴れしていたほど。そんな血気盛んだった吉村が「しあわせを分けなさい」のMVで見せた“幸せ顔”は、当時の芸風とのギャップが感じられ、さらに実在する挙式プランを再現するなど、リアリティのある演出も相まって、楽曲の世界観をより引き立たせるものになっていた。