医師不足で「無医地区」増加…地域医療守るカギは「総合診療医」 “医師の偏在”問題解決に向けた公立病院の取り組み
医師増えるも「無医地区」増加
2022年時点の医師の数は、島根県が2024人、鳥取県は1740人となっており、それぞれ県全体では14年前の2008年に比べて1割程度増加した。 その一方で、「無医地区」も島根・鳥取両県で共に増えている。全体では増加している医師の数だが、中山間地域では減少傾向が見られ、増加しているのは人口が多い市部に偏っている。いわゆる“医師の偏在”が新たな課題として浮かんでいる。 その背景の一つとして挙げられるのが、病院経営の問題だ。 山口院長が「人口減少で、特に地方のへき地では患者がどんどん減って、医者としてももうペイできない」と指摘するように、患者の減少によって病院の経営が成り立たない地域も出てきている。
カギを握る「総合診療医」
医師の不足、偏在が課題となる中、地域医療を守るために邑智病院では10年前からある取り組みを進めている。 山口院長は「小さい地域の病院に、色々な専門科を全部揃えるのは効率も悪い」と考え、「総合診療科」を開設した。 「広い分野で高い臨床力と知識を持った医師。そういう訓練をしたドクターを中心に医療を進めるのが現実的」だとして、幅広い症例に対応できる「総合診療医」の確保に取り組んでいる。 その総合診療医の1人が、板持卓弥診療部長。島根・松江市出身で、邑智病院に約10年勤務している。 外来の現状を聞くと、患者の中心は高齢者で症例は幅広く、発熱や腹痛など体調不良は全般的に来るという。 高血圧・糖尿病・認知症・生活習慣病のマネジメントまで幅広く対応が求められる中、板持部長は、高齢化や人口減により過疎化が進む状況において、総合診療医は間違いなく地域の役に立つと考えている。
医師不足解消へ県が支援も課題残る
医師不足の地域に欠かせない総合診療医の確保に向けて、島根県医療政策課・糸賀晴樹課長は「それぞれの公立病院が地域医療を支えているという実態があり、県としても、その取り組みをしっかり支援していく」と県の方針を説明する。 島根県は、島根大学や県立中央病院と連携して、県内で総合診療医の育成を進め、総合診療に興味を持つ医師の確保につなげる考えだ。 また、一定期間、地方で勤務することを条件に学費が免除される自治医科大学の卒業生の受け入れも積極的に進めている。 地域医療を支える切り札ともいえる総合診療医だが、その確保には課題もある。 例えば、自治医科大学を卒業した医師は、学費免除を受ける条件として9年間、地方で勤務することになっているが、この期間を終えると県外に出てしまうケースも少なくない。 この点について、糸賀課長は「地域の医療を提供してもらう、地域に定着してもらうというところで、県としても課題と認識している」とした上で、地域に愛着がある県内出身者を育成することや、“医療を通じて地域を守る”という意識が、医師が県内にとどまることにつながるとして、医師と地域のネットワークづくりなどにも取り組んでいる。 現状、医師不足を解消する特効薬は見当たらない。各地の現場で模索が続く中、邑智病院の取り組みは、解決につながる一つのヒントになるかもしれない。 (TSKさんいん中央テレビ)
TSKさんいん中央テレビ