スポーツ事故の脳しんとう「危険性を指導者らに周知して」長野県教委に要望
長野県内の高校で起きたスポーツ事故で障害が生じた生徒の親が9日、スポーツ指導者や保護者に事故予防の知識を徹底するよう文書で長野県教育委員会に要望しました。スポーツ事故防止の啓発活動に取り組む「青少年スポーツ安全推進協議会」も同行し、事故防止研修会の強化などを要望。全国では中学、高校での事故が目立ち、指導者や保護者、生徒などを対象にした幅広い事故防止対策が課題となっています。
要望書は脳しんとう後の再出場を疑問視
同協議会や母親によると、長野県内の高校でハンドボール部に所属していた2年生の男子学生は、2014年に練習試合中、シュートしようとした相手選手の膝を左ほおに受けて転倒しました。試合を一時中断し、担がれてコートの外に出て、顧問の教員が意識を確認。3分間休んだ後、出場できるかを教員が確認し、その後2分ほど試合に合流しました。 試合後、教員は母親に連絡し、軽いむち打ちと軽い脳しんとうの可能性が高いので心配なら受診するよう勧めました。同日夜、教員が生徒宅に連絡したところ、症状の改善がなかったため脳神経外科の受診を促し、病院に行くと緊急入院。強い脳しんとうと左目眼窩(がんか)骨折、頸髄(けいずい=脳に近い脊髄の上部)損傷の診断があり、事故直後の記憶がないことも分かりました。 この日、県教委に対策を要望した母親、米谷美弥さん(上田市)によると、傷害を負った長男は両腕のしびれが続き、1から100までの数字が数えられないことも。「好きな小説もどこまで読んだか分からなくなることがある」といいます。 要望書で問題としたのは、負傷していたのにもかかわらず、再び出場した点。「医師も、脳しんとうの後、再出場させると死に至ることがある、なぜ救急車を呼ばなかったかと疑問を呈しており、本人が出られると言っても指導者は止めるべきではなかったか」と指摘。協議会の澤田佳子会長(松本市)も要望書で「スポーツ指導者や競技者に脳しんとうや頭部外傷の危険性への知識や安全への配慮が浸透していない」と問題にしています。