免震研究推進機構、7月から「免震動的性能認証制度」開始。国内初の実大試験機活用・免震装置の信頼性担保
免震研究推進機構(代表理事・和田章東京工業大学名誉教授)は「免震動的性能認証制度」を7月1日から開始する。世界トップクラスの精度を誇る実大免震試験機「E―Isolation」を使って建築物に用いる免震装置の性能を評価するもので、免震構造の信頼性を担保し、普及・拡大に寄与することが期待される。 これまで国内における免震装置の性能確認は実大の免震装置を用いて動的に加振する試験は実施されないことが通例だった。本制度では昨年3月に兵庫県三木市で完成した国内初の実大免震試験機「E―Isolation」を活用。「動的性能認証」と「個別動的性能認証」の2種類の認証を同機構が行う。 「動的性能認証」は建築物に多く用いられる免震装置の動的性能を3年に1度、定期的に認証する。サンプル的に取り出した製品を試験体として実大免震試験機を使って動的試験を実施。その結果を用いて動的性能を認証することで発注者や設計者、施工者が安心して製品を活用できる仕組みだ。 また、「個別動的性能認証」は個別の建築物に用いられる免震装置の動的性能をプロジェクトごとに認証する。実際の建築物へ使用する免震装置の性能を直接確認するために建築物へ組み込まれる製品の一部を選び、実大免震試験機に持ち込んで動的性能を確認する。これにより個別のプロジェクトにおける免震構造の信頼性をより高めることができる。 免震構造は地震時の建築物の被害を大幅に軽減するほか機能継続確保に有効とされ、庁舎や病院などの建築物のほか、超高層ビルなどでも採用が進んでいる。今年1月の能登半島地震でも免震構造を採用した病院は地震後も機能を継続できたという。 この性能を担保する免震装置や制振装置について、従来は国内に実大免震試験機は存在していなかった。こうした中、2015年と18年に免震・制振装置のメーカーにおける出荷試験で10年以上データ改ざんが行われていたことが発覚し、大きな社会問題となった。事件の根底には実大・実荷重・実変位・実速度の試験を行える試験機が国内になかったことも背景とされる。 昨年完成した実大免震試験機は高精度の荷重測定を時々刻々と実施できる世界に類を見ない特徴を有する。今回、この装置を活用した動的試験による認証制度を開始したことで、免震装置の信頼性を担保する体制が整った。