新党立ち上げ「石丸伸二氏」は結局何がしたいのか? 大学時代の友人は「今の彼を見ていると、無理をしていて辛いんじゃないかなと…」
異様だった石丸人気
そんな石丸氏は5月、突如東京都知事選への出馬を表明。大学時代の“いい人”から一転、議会やメディアに攻撃的な姿勢で立ち向かう“切り抜き動画”でファンを増殖させ、立憲民主党の看板議員だった蓮舫氏を完膚なきまでにたたきつぶした。 安芸高田市長時代に対立した市議とは訴訟に発展するなど、地元ではしこりを残しながらも、驚異的な健闘でがぜん注目が集まったわけだが、 「石丸さんを支持しているのは、ユーチューブでひろゆき氏やホリエモンの動画を視聴するのが好きな人たちだと思われます」 とは、コラムニストの辛酸なめ子氏である。 「言い換えれば、頭の回転が速くて相手を言い負かしてくれそうな人を好む層。このような視聴者には、変わらない現状に対して頭脳明晰な異端児がズバッと物申すというストーリーが好まれます。同じようなスタイルの石丸さんならば政治を変えてくれるかも、と期待して投票したのでしょう」
「国政政党はコスパが悪い」
そんな支援者たちを味方につけ、石丸氏は満を持して新党立ち上げを発表したわけだが、またしてもなぜ東京都なのか。 安芸高田市長時代から石丸氏のネット戦略に注視してきたITジャーナリストの井上トシユキ氏は「石丸氏は積極的な判断から新党の立ち上げを発表したのではなく、消去法で残ったのが地域政党の設立だったのではないでしょうか」と指摘する。 「国政新党で確実に当選者を出せるかどうかは未知数なのです。一方、石丸さんは都知事選で都民の有権者に鮮烈な印象を残しました。顔と名前は確実に覚えてもらいましたから、東京都に地盤と看板を確保したようなものです。新党で都議選に挑戦すれば高いコストパフォーマンスが期待できます」(井上氏) ただし、新党の候補者が自動的に支持を得られるとは限らない。そもそも地域政党に落胆させられる理由の一つに、候補者の顔ぶれが指摘できる。候補者の公募に応じた人々の顔ぶれを報道で知り、げんなりした経験のある有権者は少なくないだろう。 「今、石丸氏にとって最も必要なものは“橋頭堡(きょうとうほ)”です。1人で国政選挙や首長選に挑戦しても仲間がいませんし、国政政党はコスパが悪い。ところが東京都を基盤とする地域政党なら高いコスパが期待できますし、最悪の場合、石丸さんと仲間1人の2議席でも十分です。表面的には惨敗に終わっても、石丸さんが都議になれば周りが放っておきません。マスコミは連日のように動向を報じるはずですし、大阪維新の会は必ず連携を呼びかけるでしょう。都議選の結果がどうであっても、石丸さんにスポットライトが当たる可能性は高いと考えられます」(同) しかしながら、それでも“惨敗”の内容は極めて重要だという。 「善戦の上で惨敗したのなら、石丸さんの支持層は揺らがないでしょう。石丸新党にとって最悪の結末は、支持者が納得できない選挙戦を展開して敗北した場合です。石丸新党が都議選で、どう戦うかを考えてみましょう。都知事選で石丸さんは“ふわっとした公約”を掲げ、“ふわっとした民意”をつかむことに成功しました。ただし、この手法は1回限りです。石丸新党は明確な公約を掲げて都議選に挑む必要がありますが、既存政党のような総花的な内容では有権者は失望するでしょう。国民民主党が103万円の壁撤廃を訴えて躍進したように、有権者に分かりやすい“ワンイシュー政治(単一論点政治)”を展開する必要があります」(同) ちなみに、Smart FLASHが国民民主党の玉木雄一郎代表の不倫問題についてスクープ記事を配信したのは11月11日。そして石丸氏が新党を発表したのが12日である。動画内でも「国民民主党は都議選には出るなって、玉木さんにいやがらせしながら要求しよう」などと発言していた。これは玉木氏をライバル視しているということなのか。 井上氏は「石丸さんは、玉木さんの報道を意識した可能性がある」と指摘する。“第三極を担うのは玉木氏ではなく俺だ”と宣言したというわけだ。 いずれにしても、都民の有権者が「そうだ!」と熱狂するワンイシューを掲げて都議選を戦えば、たとえ獲得議席が期待を裏切ったとしても石丸氏の“カリスマ性”は保持される。既成政党への不満や不信感は今後も増すことはあっても、減っていく可能性は低い。その意味では新鮮さを維持している間は、石丸氏への期待は一定レベル以上を保てるだろう。逆に、都議選で有権者の心をつかむことに失敗すると、石丸氏の“名声”が音を立てて崩れる可能性もある。来夏、石丸氏は東京にどのような風を吹かせるだろうか。
デイリー新潮編集部
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