【何観る週末シネマ】実写化を成功に導いてきた武内英樹監督が漫画原作映画の良さを再定義『はたらく細胞』
この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、現在公開されている『はたらく細胞』。気になった方はぜひ劇場へ。 【写真】『はたらく細胞』場面写真【14点】 〇ストーリー 映画史上最“小”の主人公…その名は、細胞!人間の体内の細胞、その数なんと37兆個。酸素を運ぶ赤血球、細菌と戦う白血球、そのほか無数の細胞たちが、あなたの健康と命を守るために日夜全力ではたらいているのだ。高校生・漆崎日胡(芦田愛菜)は、父親の茂(阿部サダヲ)と2人暮らし。まじめな性格で健康的な生活習慣の日胡の体内の細胞たちは、いつも楽しくはたらいている。一方、不規則不摂生に日々を過ごす茂の体内では、ブラックな労働環境に疲れ果てた細胞たちがいつも文句を言っている。親子でも体の中はえらい違いだった。仲良し親子のにぎやかな日常。しかし、その体内への侵入を狙う病原体たちが動き始める…。漆崎親子の未来をかけた、細胞たちの「体内史上最大の戦い」が幕を開ける!? 〇おすすめポイント アニメ化もされた、清水茜による同名漫画を実写映画化した本作。おそらく今年実写化された漫画原作映画としては……トップレベルだ。 「ナースのお仕事2」や「のだめカンタービレ」シリーズなど、90年代からフジテレビの人気ドラマを支えてきたドラマ演出家で、近年は映画界での活躍も目立つようになったきた、武内英樹の最新作でもある。 武内監督といえば、「テルマエ・ロマエ」シリーズもそうだが、「翔んで埼玉」シリーズや『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(2024)など、奇抜な設定の作品を次々と実写化し、成功に導いてきた監督としても知られている。 ヴィジュアルやソフトBL要素など、魔夜峰央(「翔んで埼玉」の作者) 感が抜け切れていないものの、原作の良さと、映画としてのオリジナリティの丁度、中間的な作品といえる、漫画原作映画のお手本と言っても過言ではない。つまり、映画化されたことの意義を強く感じる作品だ。 バカバカしさの中に、一本の筋が通った社会派なメッセージ性を隠す点では、うってつけの題材だったようにも思える。 これは漫画版も同様であるが、人間の体内にある様々な細胞を擬人化していることで、日常生活における細胞の動きが分かりやすく、実際の医師が推薦する作品だけのことはあり、単純に学びが多い。 それに加えて、作品によっては失敗の原因となることもあるが、今回は成功な武内作品ならではのシュールなコメディ要素、少し速足かもしれないが人間パートの、涙をさそう感動シーン、ハイクオリティなアクションが組み合わされることで総合的に成功に導いてくれた。 ちなみに佐藤健のアクションシーンからは、実写映画版「るろうに剣心」シリーズを感じさせるが、それもそのはず。今作のアクション監督は、「るろうに剣心」や『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』(2021)などでアクションを手掛けてきた大内貴仁によるものだからだ。 キャスティングの面でいえば、恐らく意識してのものだと思うが、芦田愛菜と阿部サダヲに親子を演じさせてることで「マルモのおきて」を連想させるキャスティングも見事だ。 (C)清水茜/講談社 (C)原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社 (C)2024映画「はたらく細胞」製作委員会 〇作品情報 監督:武内英樹 脚本:徳永友一 出演者:永野芽郁、佐藤健、芦田愛菜、山本耕史、仲里依紗、松本若菜、染谷将太 板垣李光人、加藤諒、加藤清史郎、マイカ・ピュ、深田恭子、片岡愛之助、新納慎也、小沢真珠、Fukase (SEKAI NO OWARI) 、阿部サダヲほか 原作:清水茜「はたらく細胞」(講談社「月刊少年シリウス」所載) 原田重光・初嘉屋一生・清水茜『はたらく細胞BLACK』(講談社「モーニング」所載) 製作:映画「はたらく細胞」製作委員会 制作プロダクション:ツインズジャパン 主題歌:Official髭男dism「50%」(IRORI Records / PONY CANYON Inc,) 配給:ワーナー・ブラザース映画
バフィー吉川