片頭痛は放置しないで治療する時代 専門外来に患者続々 症状和らげ、生活の負担減らしたいー病院が啓発活動も
諏訪赤十字病院(諏訪市)開設の「頭痛外来」、半年で145人受診
諏訪赤十字病院(長野県諏訪市)が4月に開設した「頭痛外来」を受診した人が半年間で145人に達した。症状に悩む人が多いにもかかわらず、治療せずに放置されがちな頭痛の専門外来は諏訪地域で初めて。同病院は多数の潜在的な患者が地域にいるとみて、受診者の多さを「想定通り」と分析する。適切な通院治療を受ければ症状を軽減して、生活上の負担も減らせるとし、地域住民に正しい治療を広める活動にも乗り出した。(福島愛美) 【地図】長野県諏訪市の諏訪赤十字病院
効果ある注射薬登場、治療劇的進化
日常生活に支障をきたす片頭痛に悩む人は全国に約1千万人いると推定されている。この治療に効果がある注射薬が2021年に登場し、内服薬が中心だった治療が劇的に進化した。通院治療の有用性が大きくなり、医療機関が専門外来を設ける流れにつながっている。 県内では、信州大病院(松本市)が昨年5月に開設。諏訪赤十字病院は日本頭痛学会が認定する専門医で同病院脳神経外科部長の和田直道医師(56)らが担当となり、患者に向き合う態勢を整えた。
患者の多くは片頭痛、女性は3分の2程度
同病院は完全予約制で毎週木、金曜日に開設し、医師3人が診察に当たる。和田医師によると、9月末までの半年間に受診したのは女性100人、男性45人。年代は10代~80代と幅広く、50代までが特に多かった。患者の多くを片頭痛と診断した。 原因ははっきりしていないものの、片頭痛は何らかの刺激によって三叉(さんさ)神経から出される「CGRP」という物質によって脳血管に拡張や炎症を起こすとされる。新たな注射薬はCGRPをブロックするといった作用があり、症状の改善が期待できるという。 同病院の頭痛外来では、患者に痛みの出現を記録してもらい、仕事や学校、家庭でどんな支障があるかも数値化して把握。和田医師は「頭痛は日常生活だけではなく、仕事のパフォーマンスが落ちるなど経済的な損失も大きい。適切な治療が必要」と訴える。
治療と同様に啓発活動も重視する。ありふれた症状だけに「頭痛ごときで病院に行くのか」といった偏見は依然として強い。同病院の頭痛外来を受診した患者には、自己判断で痛み止めの服用を重ね過ぎて「薬物乱用頭痛」になった人もいたという。 片頭痛の悩みは若年世代にも多いことから、同病院は諏訪市内3高校に通う高校生と、小中高生の保護者を対象としたアンケートを始めた。潜在的な患者数を把握するとともに適切な治療を受けてもらうよう促す狙いで、調査研究の手がかりにしたい考えだ。
[諏訪赤十字病院]とは
救命救急センターや認知症疾患医療センターなどを備える諏訪地域の中核病院。1880(明治13)年に公立高嶋病院として開院。1923(大正12)年1月、日本赤十字社長野支部病院諏訪分院になった。諏訪赤十字病院と改称し、99年に諏訪市小和田から現在の諏訪市湖岸通りに移転。内科や精神科、産婦人科など32の診療科目があり、これとは別に4月開設の頭痛外来は脳神経外科と脳神経内科の医師が診察に当たっている。