県内43市町村のうち15市町村が消える可能性…人口流出に直面する自治体、移住・定住策だけでは大きな流れ変えられず
27日投開票の衆院選に合わせ、鹿児島県内で浮き彫りとなっている課題について現状を探るとともに、県内4選挙区に立候補した12人の考えを聞いた。(衆院選かごしま・連載「論点を問う」②より) 【写真】市役所入り口にある、人口が記されたホワイトボード=16日、垂水市
垂水市のフェリーターミナルから車で約25分。曲がりくねった山道を進んだ標高550メートルの中山間地に、112人が暮らす大野地区はある。16日、地元農家の男性(69)は、収穫したサツマイモを作業小屋につり下げる準備を黙々と進めていた。 市内で最も人口の少ない同地区は、サツマイモを約2カ月間外気にさらして甘みを凝縮させた「つらさげ芋」が名物。全国放送のテレビ番組でも紹介され話題となった。販売解禁の12月初旬に毎年開催される「大野原いきいき祭り」は県内外から1500人が集まる一大行事だ。 しかし15回目を迎える今年、実行委員会は今回で祭りを最後にする方針を決めた。最大の理由は高齢化による人手不足。住民の約4割は畜産会社で働く技能実習生など外国人で、日本人67人の約7割が65歳以上。人口の10倍以上の来場者に対応するのは困難と判断した。実行委員長でもある男性は「どこかで一度区切りを付けないといけない」と語る。
■ ■ ■ 大野地区のある垂水市の人口は1日時点で1万2465人。民間組織「人口戦略会議」が4月にまとめた報告書で、若年女性人口が今後30年間で50%以上減ると推計される「消滅可能性自治体」に分類された。県内では全43市町村のうち15市町村が該当し、垂水市の減少率は市で最大の62.2%だ。 大野地区では2006年の大野小中学校閉校を機に、人口減少に歯止めをかけようと「つらさげ芋」をブランド化。大学生の農業体験の積極的な受け入れにも着手し、交流人口増を目指してきた。 市も対策のため、空き家の改修費支援や新婚夫婦を対象とした引っ越し費用などを助成する。しかし、人口は20年の国勢調査と比べ1354人減。4年間で約1割減ったことになる。市の担当者は「移住・定住策だけでは限界がある。住んでいる人の満足度をいかに高め、どう住み続けてもらうかが重要だ」と語る。 ■ ■ ■ 政府は14年、東京一極集中の是正と人口減少克服を目的に「地方創生」を本格的に打ち出した。10年を迎え、地方への移住増加で一定の成果はあるものの、大きな流れは転換していない。