一般市民が「巨大IT企業」を絶えず監視していないとヤバい理由
今や私たちの暮らしに欠かせない存在として、日常生活に便利さや快適さをもたらしてくれるデジタル技術。 【書影】『デジタル・デモクラシー ビッグ・テックを包囲するグローバル市民社会』 一方、そうしたデジタル社会の基礎を支えるビッグテック(巨大IT企業)の影響力が日に日に拡大していることで、大量に集積している個人情報の取り扱いが不透明であるなど、新たな問題も指摘されている。 日々、進化する最新のテクノロジーが社会の姿を大きく変える中で、公正なデジタル社会を実現することは可能なのか? 各国の現状や動きを紹介しつつ、この問いに正面から向き合うのが、内田聖子氏の新刊『デジタル・デモクラシー』だ。 * * * ――2018年にGoogleが、創業当時に定めた行動規範から「邪悪になるな」という文言を削除していた......という本書の「まえがき」を読んで衝撃を受けました。内田さんがデジタルデモクラシーというテーマに注目したきっかけは? 内田 私は以前から、自由貿易などのグローバル経済がもたらす不公正の問題について、主に市民運動の視点で取り組んできたのですが、その中でも、ここ数年はデジタル技術に関する課題が非常に大きくなっていると感じていたからです。 もちろん、インターネットを通じたさまざまなサービスや、急激な進化を続けるAIの技術が世の中を便利で快適なものにしているというポジティブな側面は私も否定しません。 しかし、巨大IT企業が牽引する「デジタル経済」が社会を急激に変えていく中で、デジタル技術を活用した国家権力による監視やプライバシーなどの人権侵害、SNSによる人々の分断、偽情報の拡散といったネガティブな側面が無視できなくなっているのも事実です。 また、そうした現状に対する抗議の声が世界各地の市民から湧き起こっているということも知ってほしいと思いました。ただ、残念ながら、日本ではまだこうしたデジタル経済の負の側面に対する関心が低く、こうした問題に取り組んでいる市民団体やNGOもわずかだというのが実情です。 ――昨年末までに、サンフランシスコ市など、全米23の自治体(州を含む)で警察など当局による「顔認識技術」の使用の禁止や規制に関する条例が制定されていると知って驚きました。