【高校サッカー選手権】怪我を乗り越えた逆転勝利の立役者 山梨学院FW関塚力登「まず県で勝って全国で結果を残したい」
11月2日、第103回全国高校サッカー選手権山梨予選準決勝が行われ、韮崎と対戦した山梨学院高等学校が3-2で逆転勝ちを収め、決勝進出を決めた。 【フォトギャラリー】山梨学院高等学校vs 韮崎 優勝候補筆頭と目されながら昨年の選手権予選で日本航空に苦汁を嘗めた山梨学院高等学校。リベンジを誓った今年の選手権予選でも昨年同様、準決勝で35回目の選手権出場を目指す韮崎に1点リードを許す苦しい展開の中、FW18関塚力登が52分に投入される。 「自分が絶対点を取ってチームを勝たせたいっていう気持ちでした」 しかし、66分、前掛かりになった裏を突かれ、カウンターから韮崎に追加点を浴び、チームは窮地に追い込まれる。 「交代して入って2点目を取られた時は少し焦りました」 そんな気持ちをすぐさま落ち着かせた関塚は、自らベンチに向けて行動を起こす。 「最初(左)サイドハーフだったんですけど、(島垣)コーチに『ちょっとフォワードやらして下さい』って言ってやらせてもらいました。自分は元々ずっとフォワードで、高校に来てあまりフォワードをやってなかったんすけど、やっぱ自分の力を出せるのはフォワードなので」 すると、山梨学院は関塚同様に後半からピッチに登場したMF8速水仁が70分にゴールを決め、追撃を開始する。残された時間は20分、懸命に追いかける山梨学院だったが、韮崎も死に物狂いで守ってくる。そんななか、5分間のアディショナルタイムで山梨学院がミラクルを起こす。 「まず自分が裏抜けして、それを鈴木琉斗がよく見てくれていました。それでカットインした時に相手の足が届きそうになかったので、そのままシュートを打ちました」 土壇場で同点に追いついた山梨学院。ベンチも応援席も一気に盛り上がる。だが、残された時間は僅か。誰もが延長戦突入を疑わない中、冷静さを取り戻したイレブンは一気に仕留めに掛かる。88分、左サイドからDF5小柳堅也が逆サイドに展開すると、これをDF4西澤隼斗が競り合いから折り返したボールがゴール前に溢れる。すぐさま反応した関塚が冷静にこのボールを押し込み、遂に試合をひっくり返した。 「誰かの折り返しが自分のところに溢れてきて、それを決めるだけでした」 無我夢中で誰の折り返しかもわからない状況だったが、ストライカーはしっかりと口を開けたゴールとそこに至るまでのプロセスは決して見逃さなかった。 「ボールがここに溢れそうだなっていうところへの予測とか反応が良い選手。誰よりも次の展開を予測してる」(岩永将監督) 指揮官も認める関塚らしさが発揮された見事な2発だった。 「怪我してて途中から(の出場)になって、でも自分は点を取ることが仕事だと思ってるので、点を取るっていうのは、最初から出ても途中から出ても変わらないと思います。自分もああいうゴール前とか、得点力が武器なので、(今日は)自分の武器は出せました」 しかし、この日のゴールも関塚にとっては単なる通過点だ。 「1年生の時も2年生の時も膝を怪我してて試合に出られず、今回も足首を怪我して先週復帰したばかりで。ちょっと今日も痛みがあったので不安でしたが、アドレナリンでなんとかなりました(笑)。初めての県予選なので、まず県で勝って全国で結果を残したいです」と意気込んだ。 まるでサッカー小僧のような表情で話す関塚力登。今年の春先は、毎試合ゴールを重ね「力登が決めると勝つ」と言われ続けるも、無念の戦線離脱。ゴールハンター関塚力登は少しの間、その歩みを止めてしまったが、チームのため、そして自らの夢を叶えるために、再びその一歩を踏み出した。 (文・写真=西山和広)