「ADHDとASDを抱え」宮村優子 国語ができない長男が挑んだ中学受験で得た教訓と親ができる「たったひとつのこと」
でも、トップ校の合格を狙う子たちは夏休みなどに選抜講習を受けるんです。それを受けるためにはテストで一定の点数をとらないといけません。その点数がとれていない時点で、本人も最難関校はムリだなとわかっていたと思います。あるとき、「僕にはあの学校はムリかもしれない」と、ぼそっと言っていました。息子の挫折感が伝わり「この子なりに頑張ってきたのになあ…」と、せつなくて涙が出てしまいました。その後、関西から東京に引っ越し、現実的な志望校を探して、無事に合格しました。
■中学受験で得たのは「親は見守ること」だけ ── 無事に中学受験を終えて、宮村さんはどんなことを感じていますか? 宮村さん:現在息子が通っている学校が、すごく彼に合っているんですよ。息子も楽しそうだし、私も「この学校すごくいいじゃん!」という気持ちになっているところです。先生方はいろんな方法で「この科目は楽しいよ」と、うまく誘導してくれているようです。以前の息子は算数しか興味がなかったけれど、「あれっ、その教科いつのまに好きになったの?」と思うほど、ほかの教科の勉強を始めています。
学校では中間試験や期末試験のときも、生徒全員を講堂に集めて勉強方法を教えてくれるんです。テストに出る範囲をちゃんと理解して、ノートを見返して、プリントを整理するという基本的なことから指導してくれて助かっています。自分で作った勉強計画表を提出すると、先生がチェックしてくれるんです。ムリなく勉強できているか、計画通り進められているかなどを確認してくれるから、息子の特性である「タスク管理が苦手」や「好きなことしかやらない」面は、かなり緩和されたように思います。
── 中学受験に取り組んでみて、よかったですか? 宮村さん:よかったです。わが家は親が主導ではなく、息子の意志で中学受験をしました。小学生で自分からやりたいことを見つけ、真剣に取り組んだのはすばらしいことだと思います。とはいえ、子どもはなかなか勉強に取り組まないこともあります。その姿を見ていると、もどかしくて「自分から受験したいと言い出したんだから、もっと勉強しなさい」とうるさく口出しするなど、勉強させようとしたこともありました。でも、受験は自分との戦いでもあります。最後のほうは「親のできることは見守ることだけ」と、達観するようになりました。「子どもの意志を尊重し、自主性に任せる」ことを学ばせてもらい、親である私も成長できた気がします。