世界が注目する福岡の屋台、新規参入は倍率5倍の狭き門 条例施行から10年、一時は衰退の危機もコロナ乗り越え回復
歩道脇にならんだ開放的な屋台、その軒先にはラーメン、焼き鳥などと書かれた赤ちょうちんがぶら下がる。福岡市には国内有数の100軒を超える屋台が集まる。観光のシンボルとして外国人の観光客からも人気だが、一時は営業に関する規制強化で衰退に拍車がかかった。だが市は2013年9月に営業ルールを定めた全国初の「福岡市屋台基本条例」を施行。営業の適正化を進め、観光資源として活用する方針に転換した。店主の高齢化や新型コロナウイルス禍も乗り越え、客足は回復基調にある。代表的な中洲の屋台街や戦後に誕生したとされる歩みを取材した。(共同通信=滝田汐里) ▽人気メニューはギョーザとめんたいこ 福岡市内の屋台は、歓楽街の中洲や市中心部の天神、ラーメンで有名な長浜の3地区に多い。8月下旬の夜、オーストラリアのシドニーから夫と中洲の屋台を訪れたシャーロン・マロサさん(52)は「雰囲気がきれい。とても楽しい」と笑顔で話し、客同士で乾杯した。
韓国の釜山から「博多屋台 中洲十番」を訪れた大学生の朴慧彬さん(18)も「日本の夏を感じたくて来た。料理をしているのを間近に見ながら食事ができるのが魅力的。ラーメンもおいしい」と満足げな様子だ。 中洲十番の店主、田中博臣さん(50)によると、客の4割近くは外国人観光客で、福岡へのアクセスがいい韓国からの客が多い。8月に中国政府が訪日団体旅行を解禁したこともあり、最近は中国人客が増えてきた。平日の夜にもかかわらず、店内はほぼ満席状態。田中さんは「インスタグラムなどSNSの効果もあり、開店前から待っている客もいる」と汗を拭った。 以前の客層は、一次会が終わって流れてくるサラリーマンが多かったが、最近は若い世代のカップルや友人同士も増えてくるなど変化を感じている。人気のメニューを聞くと「ギョーザとめんたいこ」。やはり福岡グルメだ。 米有力紙ニューヨーク・タイムズは1月12日の旅行欄で「2023年に行くべき52カ所」を特集し、世界各地の19カ所目に福岡市を取り上げた。夜は屋台が並び、ラーメンや焼き鳥、おでんなど多様な料理が楽しめると評価した。福岡市の屋台では「生もの」の提供が認められていないため、ラーメンや焼き鳥を扱う店が中心だが、最近はフレンチや中華など海外料理を提供する変わりダネも出てきている。