【子どもの性被害】あげた声をつぶす大人たち 上下関係があるところで「同意の上」は成り立たない 被害者が「声をあげていいんだ」と教えることの大切さ バトン元指導者わいせつ容疑逮捕で専門家解説
■学校や習い事の中での特殊性
学校や習い事の先生など、一定期間、関わり続けなければいけない相手の場合、被害を言い出せないことも多いです。被害を言い出すことによって、子どもの日常生活が壊れてしまうことを恐れ、子ども自身だけでなく保護者も、事が大きくなることを危惧して、動けなくなってしまいます。ですから、学校や習い事での上下関係は、セクハラや性犯罪の温床になりやすいと言えます。
■国語や算数と同じように 学校での「性教育」が重要
私は2017年頃から、各地の保育や学校などで、子どもや保護者・教員向けに性教育の講演を行ってきました。この数年で、保護者の間では認知度も必要性も広まってきたと感じています。色々な所で子どもの性教育の講座は広まっていますし、子ども向けの絵本もたくさん出ています。子どもの性教育に特化した保護者向け情報サイトなどもあり、「幼児期、児童期、思春期の男女それぞれへの具体的な向き合い方」といった必要な情報もすぐに手に入ります。 しかし、一方で、保護者によって意識にすごく差があることも実感しています。だからこそ、園や学校での教育が大事です。保護者の意識レベルにかかわらず、すべての子どもが、国語や算数を身につけるのと同じように、性教育も学べるようにしなければいけません。義務教育の間に、学校が「今後、生きていく上で大切なこと」を教えていくことが、とても重要だと思います。
■学校による差が大きすぎる現状
とはいえ、教育委員会、学校、地域、それぞれの差が大きいのが現状です。 去年、ジャニーズの事件がニュースになって、「男の子でも被害にあう」ということを、たくさんの人が認識しました。それを受けて内閣府が、去年9月に「男の子と保護者のための性暴力被害ホットライン」を開設しました。 私は小学生の子どものPTAからの連絡メールでそのことを知ったのですが、他の自治体の知人に聞くと見たことがないと言います。教育委員会に問い合わせると、「学校に伝えました」と。学校が出していないのか、出し方が悪くて周知されていないか、うまく伝わっていませんでした。私の所も、PTAのメールで保護者宛てに連絡がきただけで、子どもの目には触れていません。せっかくそういう窓口を作っても、子どもが実際目にして相談するまで至っていない。子どもたちに分かりやすい状態で伝わっていないのでは意味がありません。 これは一例であり、このようなことはたくさんあります。地域で積極的に取り組んでいる所もあれば、教育委員会によって学校によってバラバラだったりする。令和5年3月から、子どもを性犯罪・性暴力から守るための「生命の安全教育」が、全国の学校で本格的にスタートしました。ですから、本来はどこの学校もしっかりと取り組まなければいけないのですが、実際はできていない。ここに大きな課題があるのです。