扶養控除と社会保険の扶養が見直しされた後も、年収調整が必要になる
会社などに雇用されている従業員(正社員、パート、アルバイトなど)に課税される所得税は、次のような手順で勤務先の担当者が計算する場合が多いのです。 (A)年収(1~12月の給与の合計)-給与所得控除(必要経費にあたるもので最低額は55万円)=給与所得 (B)給与所得-所得控除(配偶者控除、扶養控除、勤労学生控除など現在は全部で15種類)の合計=課税所得 (C)課税所得×税率の5~45%(課税所得の金額に応じて税率は段階的に上昇)-税額控除(住宅ローン控除など)の合計=所得税 以上のようになりますが、年収が同じ方でも課税される所得税の金額が違うのは、(B)の中に登場する所得控除の影響があります。 例えば収入が給与のみで年収が103万円以下などの、所定の要件を満たしている配偶者を扶養する方(収入は給与のみで年収は1,095万円以下)は、38万円の配偶者控除を受けられます。 そうすると課税所得が低くなるため、独身の方よりも所得税が安くなるというわけです。 また所得税の税率が10%と20%の方が配偶者控除を受けた場合、安くなる所得税は次のような金額になります。 税率10%:38万円×0.1=3万8,000円 税率20%:38万円×0.2=7万6,000円 あくまでも目安額になりますが、同じ所得控除を受けた場合でも、税率の高い方が有利になるのです。
児童手当を拡充するための扶養控除の見直し
年収が103万円以下などの所定の要件を満たしている、配偶者以外の親族を扶養する方が受けられる「扶養控除」という所得控除があります。 扶養控除の対象になる親族が例えば子供だった場合、かつては子供の年齢が何歳でも扶養控除を受けられました。 しかし2010年4月1日に、こども手当(現在は児童手当に変更)が開始されたタイミングで、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上に限定されたのです。 また同じタイミングで高校授業料の実質無償化が開始され、16歳以上19歳未満を対象にした上乗せが廃止されたので、現在の扶養控除の金額は次のようになります。 16歳以上19歳未満:38万円 19歳以上23歳未満:63万円(38万円+上乗せの25万円) 23歳以上70歳未満:38万円 70歳以上(同居老親等以外):48万円 70歳以上(同居老親等):58万円 政府が16歳以上19歳未満を対象にした扶養控除の見直しを検討していると、新聞やテレビなどが報道したため、扶養控除の見直しに注目が集まりました。 当初は廃止という報道だったのですが、最近は廃止または縮小という報道に変わりつつあります。 なぜ16歳以上19歳未満だけを見直しするのかというと、2024年10月頃から児童手当の対象を、高校生までの子供に拡充する予定があるため、そのための財源を確保したいからのようです。 また扶養控除などの所得控除は上記のように、税率の高い方が有利になりやすいため、扶養控除を廃止または縮小して児童手当を拡充すると、不公正が軽減されるからのようです。