「私ここにいていいの?」3歳の息子を家族に任せて…セッター岩崎こよみ35歳が踏ん張った1カ月「セナと珠己が本当に頑張っていましたから」
出産後は「子供優先」でやってきた
日本代表に招集されてからは、3歳の息子を夫と両親に任せて代表活動に専心しているが、2021年に出産して以降、所属チームの埼玉上尾では「子供優先」でやってきた。 「(上尾では)例えば子供が病気をしたら練習を休まなきゃいけないこともあったし、コンディション作りの部分でも、子育てを優先してしまう時もあったので、そういう自分が、ずっと100%をバレーボールに懸けているみんなと一緒にやってもいいのかな、という気持ちも、ちょっとありました」 それでも、「自分にしかわからないことや経験を伝えられれば、それはそれでいいのかな」と自分の役割を見いだし、「みんなの頑張りを(五輪に)つなげるために」と、疲労困憊の体と心を奮い立たせながら、予選ラウンド12試合を駆け抜けた。 予選ラウンド最終戦のアメリカ戦後、主将の古賀紗理那は、昨年よりチームが良くなっていると感じている点について、こう語った。 「サーブが良くなったということと、昨年に比べてコート内の落ち着き、それこそセット後半や20点以降、焦ることが減って、落ち着いてプレーできているなと試合をしていて感じます。そこは昨年よりも成長したのかなと思います」 様々な経験と覚悟を持って日本代表に加わった岩崎のどっしり感も、その“落ち着き”の要因の一つだったに違いない。
「満足することは本当にない」
周囲に安心感をもたらしながらも、セッターとして、課題に向き合い続ける毎日だ。 「3-0でもフルセットでも、勝てば嬉しいんですけど、本当に正解がないというか。セッターとしては“100点の試合”というのはないので。 『今日はこの人を活かせたな』と思っても、『この人はもうちょっと使ってあげたかったな』というのが出てくるし、全員にすべてのトスをいい質で上げられてはいないので、そこは満足することって本当にないですね」 持ち味である高い位置でのセットアップから、バックアタックも絡めてコートの9m幅を最大限に使ったコンビをテンポよく繰り出せていた試合もあれば、コンビにズレが生じた試合もあった。 20日から始まるネーションズリーグ・ファイナルラウンドでは、五輪本番も見据え、さらに精度を求めていく。 攻撃が偏らないようにしながらも、エースの古賀や石川真佑に託すべき場面では託す。そのさじ加減もセッターとしては難しい。 「ブロックを振るというか、1枚とか1.5枚にするというのも大事なんですけど、やっぱりアタッカーを信じて、アタッカーの打ちやすいところに最後託すというのは、(フルセットで敗れた13日の)カナダ戦でも課題だったんですが、この先も必要になってくる。そのバランスですね。難しいんですけど」 それでももう、コートに立つことに迷いはない。 「もうオリンピックが決まったので、ここまでくればやるだけ。ここから先は、自分のできることをしっかりコートで表現すること、メンバーにしっかり残ること。オリンピックで戦えるクオリティのプレーを得るために、残りの時間は少ないですけど、一日一日成長できるようにやっていくだけかなと思います」 誰にも引け目を感じることなんてない。家族と離れることを決意して飛び込み、自分の力でつかんだ場所だ。 “大変”なプレッシャーの中でミッションを果たした岩崎は、さらに成長した姿でパリの舞台に立つのだろう。
(「バレーボールPRESS」米虫紀子 = 文)
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