【赤ちゃんの難病】「手術を受けて本当に良かった」母親のおなかの中で『手術』国内初の治療法とは?「脊髄髄膜瘤」の新たな選択肢、患者の希望の光になるか
胎児が母親の体内にいる間に脊髄が体の外に出てしまって損傷し脳や歩行に支障をきたす先天性の難病「脊髄髄膜瘤(せきずいずいまくりゅう)」。大阪大学が今年4月、日本で初めて出産前のおなかの中で手術に成功しました。生まれる子と家族の希望となるのか。手術を受けた家族を取材しました。 【写真を見る】『脊髄髄膜瘤』とは 国内推計では年間200人~400人の新生児にみられる指定難病
エコー検査がきっかけで赤ちゃんに難病「脊髄髄膜瘤」が見つかる
大阪市西淀川区に住む北村莉奈さん。出産を間近に控え週に2回、大学病院で検診を受けています。 (北村莉奈さん)「(Q体調は?)体調は元気です。(胎児の)元気な姿をきょうも見られたらいいなと思っています」 (医師)「全部輪郭がきれいに映りきらないので、ちょっと参考値ではあるけど、多分2000gちょいくらい」 北村さんは今年5月、別の病院で受けたエコー検査がきっかけでおなかの中の赤ちゃんに難病が見つかりました。 「脊髄髄膜瘤」は胎児の体ができていく途中で脊髄が体の外にむき出しになることで神経が損傷する国の指定難病です。国内では推計で年間200人から400人の新生児にみられ、一般的には生まれた直後に手術をしていますが、脳や歩行などの運動機能に重い障害が出ることが多いとされています。 そのため、中絶が可能な妊娠22週未満で見つかった場合、7割以上が中絶を選択しています。 北村さんはお腹の赤ちゃんが「脊髄髄膜瘤」と分かったとき妊娠18週でした。 (北村莉奈さん)「まさか自分の子がっていうのが第一と、去年11月、流産を10週のときに経験してて、余計に中絶するっていう選択ができなかった。胎児手術を受けてちょっとでも症状が改善されるのであれば、手術を受けようとはもう自分の中で思ってたんで」
「胎児手術」で患者家族に希望
出産を決意した北村さん。希望を託したのは始まったばかりの新たな治療法でした。 (大阪大学医学部附属病院・遠藤誠之医師)「脊髄髄膜瘤と出生前に診断されたご両親にとって希望になればと考えています」 今年4月、大阪大学の遠藤誠之医師などの研究グループは、脊髄髄膜瘤を母親のおなかの中にいるうちに治療する国内で初めての手術に成功したと発表しました。 方法はこうです。胎児の体が安定する妊娠25週目ごろに子宮を5cm程度切開、患部が見えるように胎児の位置を調整して脊髄が飛び出た部分の筋肉や皮膚などを縫合します。胎児の段階で治療することで、脊髄の損傷がそれ以上進むのをくい止めることができるといいます。阪大病院で胎児手術を行う遠藤医師は手術のメリットをこう話します。 (遠藤誠之医師)「胎児期に手術することで、(神経の状況を)悪くなるのを止める。それを、今ある神経をできるだけ維持していこうというのが胎児手術の意義になるんですよね。生まれてからのサポートとかリハビリとか検査とか治療とかっていうのも非常に大切になってくる」 北村さんは6月下旬にこの手術を受けました。脊髄髄膜瘤の場合、できるだけ脊髄の損傷を防ぐため、出産に適した時期に入ったらすぐに帝王切開で産むことになっています。胎児手術をすれば子宮を切開したことなどによる早産のリスクも高まるため、慎重に経過を観察します。 (遠藤誠之医師)「(赤ちゃんの)こういう心拍を見てもポコーン、ポコーンって上がってるところがあるから、赤ちゃん元気ですよ~っていうふうな感じな。だから順調」