卑小な人間と壮大な自然 イヤな男が雪の村で得た気づきとは 「二つの季節しかない村」 シネマプレビュー 新作映画評
公開中の作品から、映画担当の記者がピックアップした「シネマプレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。 【写真】映画「花嫁はどこへ?」のワンシーン 「二つの季節しかない村」 「雪の轍」のヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督作品。不満や嫉妬を抱えて生きる卑小な人間と壮大な自然を対比して描く。メルヴェ・ディズダルが、カンヌ国際映画祭でトルコ人初の女優賞を獲得した。 トルコの雪深い村。美術教師のサメット(デニズ・ジェリオウル)は、辺境に派遣された運命を呪い、退屈な毎日を送っている。そんな彼が、義足の女性教師ヌライ(ディズダル)と出会う。また、ひいきにしていた女子生徒が彼を告発したことから、日常はにわかに騒がしくなり…。 主人公のサメットは狡猾で尊大、そのくせ批判には弱い。とにかく嫌な奴で、人をあざけり、生徒に当たり散らし…と想像を超えた行動をとるので観客は奇妙な緊張感を強いられる。 そんな彼が、左翼活動で片足を失ったヌライにひかれる。理想主義者で、強いまなざしが印象的な彼女だが、今や自分に何ができるのか確信が持てない。重苦しい雪景色の中、誰もがかなえられない夢を抱えて、枯れていく。夏の訪れとともに、嫌な男が得た気づきとわずかな成長が感慨深い。トルコ・仏・独合作。 11日から全国順次公開。3時間18分。(耕) 「シビル・ウォー アメリカ最後の日」 最も悲惨な戦争は、同じ国民が殺し合う内戦だという。アレックス・ガーランド監督は、分断の果てに内戦に陥った米国を舞台に、不寛容と不信が生んだ地獄を生々しく描き出した。 米連邦政府と、離脱した19州は戦闘を繰り広げ、政府軍の敗北は間近だ。写真記者のリー(キルステン・ダンスト)らは、1年以上取材を拒絶している大統領にインタビューすべく、ニューヨークからワシントンDCまで車を走らせる。 リーらが目撃する憎悪と狂気が渦巻く世界に息をのむ。大統領選前の状況を思うと絵空事と思えない。エンドロールに浮かぶ一枚の写真が衝撃的だ。12歳以下の鑑賞には保護者らの助言・指導が必要。米・英合作。 4日から全国公開。1時間49分。(耕)