「大地震が起きたとき、タワマンはいったいどうなるのか。それを考えると……」神戸市長がタワマン規制に乗り出したもうひとつの理由
販売すれば即完売。デベロッパーがタワマンを次々建てたくなるのも無理はない。 一方で、「たしかに自治体にとってもタワマンは魅力的だが、巨大な建造物が抱えるリスクを見て見ぬフリしてはいけない」と警鐘を鳴らすのが、'13年から神戸市長を務める久元喜造氏だ。 【マンガ】「憧れのタワマン生活」が一転…!残酷すぎる「格差の現実」 70を超えるタワーマンションを擁する神戸市は全国でもトップクラスの「タワマンシティー」だが、久元市長は4年前に条例を改正し、三宮など神戸の都心部での新規建設を制限した。いわゆる「タワマン規制」だ。その狙いはどこにあるのか。神戸市長の覚悟を聞いた。 前編記事『「タワマンは、巨大廃墟になる可能性」神戸市長がタワマン規制に注力する本当の理由が分かった』より続く。
リスクを軽視してはいけない
実は私は、マンションの管理組合の理事長をやった経験が2回あります。修繕積立金の引き上げをやったこともありますし、大規模修繕工事を行ったこともあります。 私が住んでいたのは、全36戸の小規模なマンションでしたが、その戸数であっても、全体の合意を得るのにはかなりの労力が必要でした。その経験があるからこそ、巨大なタワマンでコンセンサスを形成するのがいかに困難かを想像してしまうのです。 修繕の合意が得られず、タワマンの老朽化が進めば「住環境が悪くなった」と引っ越す人が増えていきます。それはだいぶ先の話かもしれませんが、住む人が減り、老朽化が進み、廃墟のようになったタワマンが街の中心部に残るかもしれない……そのリスクを軽視してはいけないのです。
人口は減少するけれど……
もう一つ、阪神・淡路大震災を経験した神戸市としては、災害リスクにも敏感にならなければなりません。タワマンの密集地で大地震が起こり停電や長期間の断水が発生すれば、その被害の甚大さは一般のマンションの比ではない。多くの避難者が出ることになりますが、全員を収容できる避難所を、自治体が開設できるのか。災害への脆弱さも、見逃してはいけないタワマンのウィークポイントです。 現在、神戸市の人口は減っています。'23年には人口150万人を割りましたが、今後、日本全体で人口が増加に転じる可能性はほとんどないと考えています。 タワマンを建てれば短期的に人口は増えるかもしれません。しかし、やはり街づくりは10年、20年のスパンで見てはなりません。デベロッパーも含め、国をはじめとした関係者間でタワマンの持続可能性について日本全体で議論がなされることを願っています。 海と山を持つ神戸市は自然と共生する町です。都心と郊外のバランスの取れた、将来にわたって持続可能な街づくりを考えることが大切なのです。 「神戸に廃墟を作ってはならない」という意志は今後一貫して受け継がれるのか。あるいは将来、新たな「論理」を掲げた市長が登場し、神戸がさらなるタワマンシティーとなることもあるのか。 いまやタワマンを建てるか建てないかは、重要な政治アジェンダのひとつとなっているのだ。 「週刊現代」2024年11月16日・11月23日合併号より 【さらに読む】『「タワマンは、巨大廃墟になる可能性」神戸市長がタワマン規制に注力する本当の理由が分かった』
週刊現代(講談社・月曜・金曜発売)