世界の若手デザイナー頂上決戦を現地リポート 「イエール賞」最終選考者に日本人も
若き才能もリアル服が主流
審査員特別賞は、型にはまらない素材選びが評価されたイスラエル人のタル・マスラヴィ(Tal Maslavi)が受賞した。石鹸のタンクトップやチョコレートのスカーフ、砂糖でできたタトゥーシールのトップス、ライダースジャケットの背面にはマッサージエンジンを備えるなど、感覚的体験を生み出すアートとファッションの境界線を曖昧した作品づくりに挑んだ。シグネチャーであるシューズやバッグに施したケーキの断面は、大阪の食品サンプル工場に依頼したものだという。
シャネル傘下のアトリエ・デ・マチエール(Atelier des Matieres)による提供素材で制作したルックで競い合うアトリエ・デ・マチエール賞と、クチュール工房の職人技術を生かしたデザインが判断基準となるLe19Mメティエダール賞は、ベルギー出身でラ・カンブル国立美術学校出身で「バレンシアガ(BALENCIAGA)」に勤めるロマン・ビショ(Romain Bichot)がダブル受賞を果たした。ビショは、羽根細工の工房のルマリエ(Lemarie)と、刺しゅう工房のルサージュ(Lesage)」と協業し、道端で拾ったマットレスに装飾を施すなど、アップサイクルの手法を基盤とした。シャネルが審査するだけにきっとクラシックなルックが選ばれるのだろうと予想していたが、「バレンシアガ」のルックを彷彿とさせる予想外のアヴァンギャルドなルックが栄冠を勝ち取った。ビショは2万ユーロの助成金と、クチュール工房との長期プロジェクト開発の機会を得て、来年の同フェスティバルで同プロジェクトを発表する予定だ。
昨今のパリやミラノのファッション・ウイークと同じく、今回のファイナリストには、既存の洋服をツイストしたウエアラブルなデザインが多かった。数年前まではメンズとウィメンズ共にテーラリングが主流だったものの、スーツ以外のユニホームを再考するファイナリストが多く見受けられたのも興味深かった。将来有望な若きクリエイターの今後に注目したい。