今話題の劇団「コンプソンズ」の劇団員が語る!旗揚げからの歩みと、新作公演『ビッグ虚無』の魅力
観客をどよめかせた、「解散」発言の真意とは!?
――実際に、「解散」を検討する瞬間もあったのでしょうか? 星野 解散しようとは思わなかったけれど、「作品をつくり続けないと消えるな」という焦りはありましたね。 金子 僕個人としては、#6『ノーカントリーフォーヤングメン』(2019)あたりから作品づくりに行き詰まっていました。旗揚げからずっと脚本を書いてきたので、「一体、次は何を書けばいいんだ」と……。で、どう舵を切るか迷っていたところでコロナ禍が始まって。むしろ、「悩んでいる場合か!」と奮い立たせられましたね。「解散」発言は、そうした苦境を打破したい思いから、つい口を衝いて出てしまったのかもしれません……(笑)。 宝保 えっと、私実は、「劇団員やめようかな」なんて考えていたときもあったんです。 金子 そうなの!?知らなかった。 宝保 #8『WATCH THE WATCHMEN(we put on masks)』(2020)あたりで、「自分は、果たしてちゃんと作品にコミットできているのかな?」と考えたら、不甲斐なくなってしまって。 細井 そういう不甲斐なさは僕にもありました。ひとり思い悩む金子さんの姿を見て、「思い付いたことは、包み隠さずに発信してみよう」と考えるようになりました。 大宮 僕たちが出したアイデアを拾うかどうかは金子に委ねるとして、「劇団員としてどう尽力できるか?」は今後の大きな課題の一つですよね。
苦境を乗り越え、新たなステージへ
――#9で気持ちを新たにし、迎えた#10『われらの狂気を生き延びる道を教えてください』(2022)と#11『愛について語るときは静かにしてくれ』(2023)。この2公演は、やはりみなさんにとって、ひと味違うものになったのでしょうか? 金子 そうですね。特に#10『われらの狂気を生き延びる道を教えてください』は、かなり思い出深い作品です。#9をみんなが上演してくれたおかげで、僕は本作の執筆に一年間くらい猶予をもらいました。その間に試行錯誤したアイデアをギュッと凝縮したのがこの作品です。また、コンプソンズとしては初めて、株式会社レプロエンタテインメントの協力のもと、浅草九劇にて半商業的に公演を行いました。 大宮 金子が#10を苦しみながらも果敢に書いていたのは知っていたので、ワクワクしながら読んだのですが、感想は「味、濃いなぁ!」でしたね(笑)。 金子 コンプソンズが一歩前進するであろう大事な公演だったので、あえて放送コードに引っかかるような過激なネタや、当時はあまり言及されていなかった芸能界の性加害問題なども取り上げて、今までやってきたことの集大成にしようと考えました。 星野 大きめの劇場で約2週間上演していたこともあり、全員が肩に力が入った状態で臨んだ公演でしたよね。そうした意味では、次作の#11『愛について語るときは静かにしてくれ』の方が、のびのびと、自分たちらしい公演だったように思います。 細井 僕は、#11の脚本を読みながら「これはすごいものができるぞ」と確信していました。それで、いの一番に金子さんに感想を伝えたんです。 金子 岸田國士戯曲賞という名誉ある賞の最終候補作品にノミネートしていただき、大変光栄でした。でも僕としては、「こっちを評価していただけるのかぁ」と少し意外だったんです(笑)。 星野 下北沢のOFF・OFFシアターでの上演だったので、お客さまにも熱量が伝わりやすかったのではないかと思います。 金子 実はあのくらい、肩の力を抜いて作品をつくった方が、よいものができるのかもしれませんね。