【鉄路と生きる】2023年度赤字の福島県内JR 5路線12区間に拡大
JR東日本は29日、利用者の特に少ない地方路線の2023(令和5)年度収支を公表した。開示した36路線・72区間の全てで赤字だった。運輸収入は約63億円にとどまる一方、運行にかかった費用は災害復旧や路線保守のため約821億円となり、赤字額の合計は約757億円だった。福島県内では常磐線、水郡線、只見線、磐越西線、磐越東線の5路線で12区間が該当し、昨年度の4路線9区間から、1路線3区間増えた。 これまで、2019年度の実績で1キロ当たりの1日平均乗客数(輸送密度)が2千人未満の線区を開示対象としていたが、今回から2023年度の実績が開示対象となり、2020年に全線再開通した常磐線のいわき―原ノ町間や、2022年9月まで不通だった只見線の会津川口―只見間、磐越東線の小野新町―郡山間が新たに開示対象となった。 県内関係で公表された5路線12区間の収支状況と赤字額の増減、1日平均の乗客数などは【表】の通り。昨年度に続き開示対象となった9区間のうち4区間で前年度より赤字額が拡大した。区間別の赤字額は常磐線のいわき―原ノ町間の31億2300万円が最も多く、水郡線の磐城塙―安積永盛間の10億6400万円、磐越東線の小野新町―郡山間の10億600万円の順に多かった。営業費用に対する運輸収入の割合を示す「収支率」が最も低かったのは磐越西線の野沢―津川間の1・0%だった。
鉄道事業は固定費が高く、赤字路線の収益改善に向けた抜本的な対策は難しいとされているが、JR東日本の担当者は、新型コロナウイルスからの影響から脱し「利用状況は改善傾向にある」としている。昨年度に続き開示対象となった9区間全てで、1日平均の乗客数が増加したため、100円の運輸収入を得るのに要した営業費用を表す営業係数が改善した。 県や県市長会、県町村会、県内48市町村でつくる県鉄道活性化対策協議会などは、県内在来線の利便性の改善や活性化を目指した議論を続けている。県生活交通課の担当者は「今回公表された数値などに一喜一憂せず、鉄道の利用促進に向けた取り組みを関係団体ともに進めていく」と語った。