時速36km vs reGretGirl バッチバチに向かい合った『FREAKY & GROOVY vol.4』【ライブレポート】
そんな熱演を目撃したreGretGirlは「どこまでもいくぞー!」と平部雅洋 (vo/g)が威勢よく声を上げて「best answer」でスタートを切っていく。ワンマンではサポートメンバーを加えて5人編成でプレイもするが、この日はライブハウス仕様なスリーピース。すっきりとした演奏を響かせながら、いいグルーヴ感も漂わせるのは匠の技。的確なフレーズを折り重ね、ハリのある平部の歌声がど真ん中でいい存在感を示している。 激しいイントロから駆け出す愛すべき地元の曲「ルート26」、タイトルコールでフロアから歓喜の声が上がった「バブルス」と続けて遠慮なしに快活なサウンドを響かせていき、まだまだ序盤にも思わず平部が「あちぃ!」とつぶやくほど熱気が立ち込めていくのだ。 前田将司 (ds)の叩き出すビートに乗って、平部が「今日はここ歌う新代田/時速と巻き起こす新時代だ/外せよ、リミッター/飛ばせよ、FEVER」とフリースタイルラップ的前口上もバッチリ決めた「ギブとテイク」は体温を上昇させた1曲。ミドルテンポながらいい歪みが施され、前のめりでそのグルーヴに酔えるラブソングだ。フロアもいい感じで揺れていき、皆々が自分の曲として受け止めていることがも伝わってくる。 ダンサブルなビートで幸せな今とそのすぐ隣に存在している悲しみも同時に歌い上げ、後半に進むにつれて十九川宗裕 (b)と前田が生み出すリズムワークも深みを増した「グッドバイ」から、少しだけ間を置き、引き締まった表情で響かせた「ワールド」、平部が泣き出しそうな声色で歌い上げ、一つひとつの音を大切に紡いだ「黒鳥山公園」とミドルバラードを続けていく流れもまた良かった。こういった流れを作れるのも持ち時間が長めなツーマンの良いところだ。 また、集まってくれたオーディエンスに改めて感謝を述べ、「みんな、きっと何事もないフリをしてる瞬間があると思う。<誰にだってあることだからって苦しくないわけじゃないでしょう>って僕の知ってる天才が、時速36kmの仲川慎之介が歌ってるけど、マジでそうだなと思って。仕事もバイトも学校も、友達、家族、思い通りにいかないことばっかりで。それでも日々は続く。だから、reGretGirlはreGretGirlなりに背中を押すんじゃなくて、ずっと隣におれたらな、と思ってる」という平部の言葉から奏でられた「tear」の包容力は本当に素晴らしかった。壮大でキラキラしたサウンドは心の重荷がスッと消える魔法のようであり、泣きたいときは泣いていいんだと肩に手を置いてくれるようでもある。曲のラスト、「ここにいる誰もが誰かにとって大切な人」と平部が声を上げたが、日常の中で見過ごしがちなことも再確認できたはずだ。 そして、時速36kmに見せつけたいとオーディエンスへ投げかけ、「ホワイトアウト」ではとんでもないシンガロングが起こったが、それだけは満足できないと言わんばかりにロックバンドの勢いむき出しで「after」「soak」と一気に駆け抜けていく。想いが溢れ出して止まらなくなるのがロックバンドだ。最後の最後まで強烈な一撃を繰り出して本編を見事に締めくくった。 軽妙なMCを挟んだアンコールでも会場の温度は下がることなく、ラストナンバーとしてセレクトした「Shunari」も大盛況。シンガロングも響き渡り、平部が「最高や」と口にするような光景が隅々まで広がっていた。 初対バンながら、お互いをリスペクトしつつ意地を張りつつ、バッチバチに向かい合った格別な夜。時速36kmは7月11日に渋谷Spotify O-EASTにて自主企画「Super Ordinary vol.3」を、reGretGirlは8月11日に大阪城野外音楽堂、8月29日に昭和女子大学 人見記念講堂でワンマンを予定しているように、それぞれの道を猛進していくが、近い将来にこの両雄が対峙するステージをまた観たいと思わせてくれる内容だった。 Text:ヤコウリュウジ <公演情報> 『FREAKY & GROOVY vol.4 ~FEVER 15th ANNIVERSARY~』 2024年6月19日(水) 新代田FEVER 【セットリスト】 ■時速36km 01 七月七日通り 02 動物的な暮らし 03 アトム 04 ラブソング 05 ウルトラマリン 06 花束 07 ブルー 08 ハロー 09 銀河鉄道の夜明け ■reGretGirl 01 best answer 02 ルート26 03 バブルス 04 ギブとテイク 05 グッドバイ 06 ワールド 07 黒鳥山公園 08 tear 09 ホワイトアウト 10 after 11 soak EN Shunari