19年ぶりの女性外務大臣 就任から怒濤の3か月を経た“上川流おもてなし外交” 2024年はどうなる?
■上川流外交のこだわりとは~ライフワークでもある“WPS”
「上川流外交」について、上川氏自身は「女性ならではの視点を、外交政策に生かしたい」と周辺に語っているという。 その代表的な取り組みが、就任後からアピールするWPS(Women Peace&Security)=女性・平和・安全保障だ。紛争などで被害者になりやすい女性の視点を、紛争の予防や和平に視点を盛り込むことが重要とする考え方だ。 上川大臣も「伝統的に社会・経済分野の課題だった女性の問題を、安全保障分野に結びつけた点で非常に重要だ」と強調。外務省内に大臣直轄のタスクフォースを設置し、さらなる推進を図る考えだ。
■国民に支持される外交を
「上川流外交」のもう1つのキーワードは「発信」。就任直後から、「国民の声にしっかり耳を傾け、理解してもらいながら、支持される外交を展開したい」と強調した上川大臣。記者会見では就任以降、情報発信を積極的にすべく、質疑応答の前に自ら発言を行い「発信」に力をいれている。 もう1つ、発信のために力を入れるのは「ソフトパワー」の活用。「日本文化や『おもてなし』をできるだけ理解してもらえるよう工夫したい」と話す上川大臣。実際、国連総会でのフランス外相との会談の際には、出身地・静岡県のお茶を一緒に楽しみプレゼントするなど「上川流おもてなし」を披露。 また、ベトナムやタイなどの東南アジア4か国を訪れた際は「書店に立ち寄り、それぞれの文化や歴史などについての書籍を購入した」という上川氏。発信強化に向けた「ソフトパワー」活用を、上川流外交の“彩”に加えようと腐心している。
■上川外交への期待…一方で「限界」指摘する声も
精力的に外交に奔走する上川大臣だが、厳しい声も出ている。ある外務省幹部は「今の外交は『官邸主導』の面が強く、上川大臣が存在感を示すのはなかなか難しい」と指摘。また、上川大臣に対して「発信に力をいれるのがわかるが、そのため新たな仕事が増えて大変だ」(外務省中堅)といった声も出ている。 座右の銘は「鵬程万里」(ほうていばんり)。「鳳凰は一呼吸、万里を飛んでいく」、道のりがはるか遠いことを表す言葉だ。「高い理想を掲げて遠くを見つめるまなざしを忘れずに」と話す上川大臣。しかし、政権としての“体力”が落ちつつある岸田内閣の中で、どこまで自身が理想とする「外交」を追求できるか、難しい年になりそうだ。