倉橋香衣の笑顔がガチガチに緊張した橋本勝也を救った「俺ってこんな感じで楽しんできたよな」【車いすラグビー金メダル会見全文】(3)
最後の最後まで力が入っていた
トレーニングをしているときは忘れられるけど、寝る前や起きてからなどです。夢の中でそういう(ミスをした)夢を見てしまうことも多くて、パラリンピックで金メダルを取るプレッシャーが、こんなに大きいんだなと感じました。 大会期間中も、なかなか自分の思うプレーができないことも多くありました。楽しめた試合もあれば、逆に楽しめずに力が入ってしまっていた試合も。特に準決勝では、最後の最後に逆転できましたけど、自分自身はプレーに力が入ってしまって、全然楽しめていませんでした。第4ピリオドが終わるまでは。 ただ、延長戦に入ることが決まって、スタートで「行くぞ!」と言われた時にさらに緊張したんですけど、倉橋選手を見たらすごい笑顔で。なんだろう、笑っていたというか。それで「あ、俺って今までこんな感じで楽しんできたよな」と。そこで一気に肩の力がスーっと抜けて、いつも通りのプレーができて、準決勝の壁を越えることができました。 決勝も最初はちょっと硬かったんですが、倉橋選手と組むことが多くて、一緒にハイスクリーンを組んでる時に倉橋選手の顔を見て自分自身を落ち着かせて。それでいつも通りのプレーができ、結果に結びついたので、安心しました。 ──決勝戦の結果を受けて、世界ランキングが1位になりました。 池:今は正直、嬉しさしかなくて、今後どうあるべきかまで考えられない。世界ランキング1位になったことも、金メダルを獲ったことも、「これで真のチャンピオンだ」という喜びしかないです。僕の中には。 ただ、日本代表として戦う中では、新しいチャレンジを続けながら進んでいかないといけない。世界のラグビーも近年似てきているんですよね。だからそれを新しく変えながら、打ち破る術を、チャンピオンらしく作り上げていくことが大切なのかなと、今は漠然と考えています。 ──池崎選手は、東京大会の3位決定戦の後に、橋本選手に「次はお前の番だぞ」と声をかけました。 池崎:そういう言葉を東京の時にかけました。でも彼は自分の努力でこの3年間、ここまで成長することができた。それを金メダルというところに導いてくれた選手の1人で、しっかり有言実行してくれました。 外から見ていて、本当に強いんだな、ここまで成長したんだなと。少し変な言い方ですが、親目線で見て、すごく喜びながら「頼もしい選手になったな」と思いました。