大阪府も導入、全国観光都市が注目 東京が先鞭をつけた“ホテル税”とは
2016(平成28)年における訪日外国人観光客数は、過去最高の2400万人を突破しました。こうした流れを受けて、安倍晋三首相は1月20日の施政方針演説で観光立国を目指すことを宣言しています。 観光客が右肩上がりで増加する中、地方自治体からは観光産業の振興や観光インフラを強化しようとする動きも見られます。そうした観光インフラの整備に充てる財源として、クローズアップされているのが「宿泊税」(通称:ホテル税)です。
ホテル税は東京が独自に創設 条例により課税
ホテル税は法律に定められた税金ではありません。条例によって自治体が独自に課税できる税金です。こうした自治体が独自に条例に基づいて制定する税金は「法定外税」と呼ばれます。それまで法定外税が制定されるケースは稀でした。2000(平成12)年に地方分権一括法が施行されたことで課税における自治体の裁量権が拡充し、法定外税の創設が相次ぎました。 東京都のホテル税は、石原慎太郎都知事(当時)の肝煎りで2002(平成14)年に導入されています。東京都主税局課税部課税指導課の担当者は、導入された背景をこう説明します。 「石原慎太郎都知事(当時)は、自民党税制調査会や政府税制調査会に似た組織として東京都税制調査会という組織を立ち上げました。その都税制調査会の提言によって、観光インフラの整備や観光振興の財源を捻出するために、ホテル税の創設が提言されたのです。ホテル税による税収は、国際都市・東京の魅力を高めることや観光の振興を図るために使われることになっています。例えば、外国語による観光ガイドマップの作成、ホームページでの情報発信、案内版や観光案内所の設置などの費用です」。
修学旅行生やビジネスマンに配慮 1万円未満の宿泊料金は非課税
都のホテル税は、1人1泊につき宿泊料金が1万円以上の場合に100円、1万5000円以上の場合に200円が課税される仕組みになっています。近年、都心部には高級ホテルが増えつつあり、そうした高級ホテルでは1泊10万円を超える部屋も珍しくありません。現状のホテル税の仕組みでは、そうした高級ホテルでも1万5000円のホテルと同様に200円の税金が課されます。 また、1万円未満の宿泊料金でも非課税となります。理由は、「教育目的の修学旅行生や商用目的のビジネスマンが宿泊するようなホテルや旅館に課税してしまうと、かえって宿泊する人を減らしてしまいます。それは東京の魅力を損なうことにもつながります。ホテル税は、あくまで東京という都市の魅力を高めるために創設されたものです。だから、1万円未満の宿泊料金には課税しないように制度設計がなされているのです」(同)といったような配慮がなされているからです。