「ミラノ・ウニカ×AI」の仕掛人、クリエイティブチームのトップが語る「AIとファッションの今後」
実際どうAIをクリエイティブに活用?
WWD:では、どの部分にAIを?
ファッダ:実際にやってみたからこそ、わかったのだが活用に関してはいくつかのポイントがあった。テーマやコンセプトが、いわゆるプロンプト(AIに入力する指示)の役割を担った。まずAIは、テーマやコンセプトを反映したビジュアル作りの、基礎部分に使った。例えば従来のトレンド情報は「テクノ」というテーマに対して、「合繊のマットな光沢」のように細かいキーワードも設定しており、それに合わせてデザイナーやブランドにインスパイアするビジュアルを制作してきた。われわれのようなトレンドコンセプターにとっては、社会的な事象をテキストに落とし込む分析力とともに、こうしたビジュアル作りも重要な役割の一つだ。だが、AIを使うと、このビジュアルが思いもよらぬアイデアを出してくる。
従来のビジュアル制作では、どのようにブランドやデザイナーを触発するか、という点が重要なわけだが、ビジュアル制作のときのアイデアはどんなに優れたトレンドコンセプターであったとしても、どうしてもその人のキャリアや発想に左右されてしまう。AIは、この部分の枠を取り払うことができた。
とはいえ、この作業は思っていた以上に非常に大変だった。単にテーマやコンセプトをプロンプトとして打ち込むだけでは、良いものが出来ず、一つのビジュアルを作るのに100回以上、繰り返す必要があった。これは正直、とてもしんどい作業だった。
ビジュアル制作は、AIが出してきたアイデアをベースに、ピッタリ合うテキスタイルを探す、あるいは制作し、服を作り、撮影した。この部分でも、従来であれば、テキスタイル会社や縫製会社にこうしたテーマに合ったテキスタイルや服の制作を依頼し、それが最終的なトレンドコーナーに設置するスワッチサンプルになったりもするのだが、あまりにも突飛なアイデアであるため、単にアイデアイメージを渡すだけでは、テキスタイル会社や縫製工場の協力を得られなかった。実際の服は、手作業で作るようなことになった。