【コラム】ASEANは経済パートナーと競争者の間…近づく波を共に越えるべき
韓国経済に大きな影響を及ぼす輸出、2024年の実績はどうだったのか。グローバル経済の不確実性にもかかわらず、韓国は過去最高となった。2024年の韓国の総輸出額は6838億ドル(約108兆円)で過去最大実績を達成した。従来の最高額、2022年の6836億ドルに比べ2億ドルほど多い。輸出金額で世界順位をつければ韓国は世界6位となる。 最高額を更新した2024年の輸出、どの国に最も多く輸出したのだろうか。韓国の輸出相手1位は依然として中国だ。2位は米国で、3位が東南アジア諸侯連合(ASEAN)だ。韓国の対ASEAN輸出額は1140億ドルと、前年比4.5%増加した。米国と中国に比べてASEANの重要性が相対的に低いと見たり、一時的な現象として見たりする人もいるだろうが、現実は全くそうではない。輸出全体に占める比率をみるとASEANは16.7%であり、中国(19.5%)、米国(18.7%)と似た水準だ。4位の欧州は10%にすぎず大きな差があるため、中国、米国、そしてASEANを韓国の3大主要輸出市場と見るべきだろう。ただ、ASEANの立場で韓国は中国、米国、日本、欧州に比べて重要度が低い輸出市場だ。 もちろんASEANを構成する10カ国すべてが重要な輸出市場というわけではない。ASEAN-6、すなわちベトナム、インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、タイなど人口や経済で比率が大きい6カ国が主要対象国だ。このうち韓国企業が最も多く進出しているベトナムが最も多く、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピンがその後に続く。 ◆主要輸出市場に浮上したASEAN-6 3大輸出市場のASEANに向かう韓国の輸出品目1位は半導体だ。ベトナムとの貿易でも半導体が輸出品目トップだ。石油製品および石油化学とディスプレー、無線通信などIT製品がその後に続く。半導体の輸出が増えた理由は、ASEANが電機電子製品生産ハブ、輸出基地に浮上しながら需要が増加したからだ。「東南アジアシリコンバレー」と呼ばれるマレーシアは世界5位の半導体輸出国であり、組み立てとテスト、パッケージングなど後工程部門で頭角を現している。シンガポールも半導体生産拠点国家として半導体チップだけでなく装備の輸出で世界市場の20%を担う。ベトナムもグローバル企業の生産投資を契機に半導体セクターを国家戦略産業に育成している。マレーシア、シンガポール、ベトナムの3カ国が世界半導体輸出で占める比率は19.5%(2022年基準)にのぼる。 米中の貿易葛藤と半導体覇権競争のためASEANへのグローバル企業の投資が増え、サプライチェーン参加度も高まった。ASEANの電機電子、半導体の対米輸出は増加傾向にあり、トランプ氏の関税圧力を懸念した事前注文の増加が2024年10-12月期の輸出にプラスの影響を及ぼした。輸出需要ばかりではない。ASEAN各国がデータセンターを構築してAIを国家戦略司令部業に指定し、独自の需要も増えている。 対ASEAN輸出をみると、ベトナムに対する輸出依存度が高く、上位品目が占める比率が50%を超える。資本財と原材料の比率は高いが、消費財の比率は10%にもならない。韓国がグローバルサプライチェーン安定化と市場多角化を進めているが、韓国とASEANの経済協力の側面では依然として特定国家と品目に集中した現象を見せている。2019年の対ASEAN投資は100億ドルを超えて過去最高となった後、2022年に89億1800万ドル、23年には約74億ドル水準に減少し、24年は1-9月の投資が55億6000万ドルにとどまった。 ◆ASEANも先端産業に死活かける ベトナムに対する累積投資額基準では依然として韓国が1位だが、これも長期的に維持するのは容易でない見通しだ。ASEANの半導体、データセンターとAIハブをめぐり各国が激しい競争をしている。ベトナムが半導体とAI部門研究開発の初期投資費用を最大50%支援する法令を発表したのもこうした背景のためだ。 半導体の輸出も安心できない状況だ。KOTRA(大韓貿易投資振興公社)の「10大輸出品目のグローバル競争動向分析」によると、中国は韓国との半導体輸出競合度が72.2にのぼる。台湾とシンガポールも輸出競合度が急速に上昇している。マレーシアとシンガポール、ベトナムが半導体、AI、データセンターなど先端産業育成に国家の死活をかけていて、中国と台湾の企業の海外拡張が加速すれば、競争構図は急激に変わる可能性が高い。 対外環境の悪化と国内景気不振の状況で輸出と対外経済協力の強化は韓国が選択できる確実な戦略的方策だ。韓国とASEANは2024年に包括的な戦略パートナーシップに格上げし、未来の協力を確認した。しかし韓国企業の海外進出戦略と政府のASEAN協力はまだ均衡と調和が不足しているのが実情だ。政府は多方面で協力案を提示し、了解覚書を締結しているが、企業は現場で実感する実質的な支援が十分でないと訴える。韓国は半導体だけでなくデジタルヘルスケアと医療装備、電力インフラなどASEANが必要とする分野で技術的優位を持つ。これをテコに効果的な協力戦略の構図を組まなければいけない。米国のトランプ政権をまた相手にする2025年、これは韓国・ASEANパートナーシップをより一層強化するべきもう一つの理由となった。2025年、韓国・ASEAN関係は経済的パートナーを越えて革新成長を率いる核心パートナーに飛躍する時だ。 コ・ヨンギョン/延世大国際学大学院デジタル通商研究教授