ガリアーノ節炸裂!「メゾン マルジェラ」“アーティザナル”の脳裏に焼き付くショー【2024年春夏オートクチュールまとめ】
アデル(Adele)がカバーしたジョージ・マイケル(George Michael)の「Fast Love」や、マックス・リヒター(Max Richter)が改作したヴィヴァルディ(Vivaldi)による「四季」の「春」とマッシヴ・アタック(Massive Attack)の「ティアドロップ(Teardrop)」をマッシュアップした楽曲が流れる中、モデルたちは時に客席の前にあるテーブルやビリヤード台に腰をかけたり、辺りを見回したり、立ち止まってポーズを決めたりしながら、ゆっくりと歩く。男性はマッチを口にくわえ、壊れた傘をさしながら震える仕草を見せたり、身を隠すようにコートを頭まで被り体をかがめたり。女性は寒さに耐えるように腕をクロスさせて体を包み込むものもいれば、壊れた操り人形のようにぎこちなく歩くものもいる。そのドラマチックな動きは、コレオグラファー(振付師)のパット・ボグスラウスキー(Pat Boguslawski)が監修したものだ。そして、パット・マクグラス(Pat McGrath)が作り出す陶器の人形のような艶のある肌に、ダフィー(Duffy)によるボサボサの髪を大きな帽子のようにまとめ上げたヘア。そんな所作や風貌が、ガリアーノが思い描く作品の世界観を具現化している。
誇張されたシルエットと15の技法で描く個性
写真家ブラッサイ(Brassai)による夜のパリの人間模様を覗き見るかのようなポートレートに興味をそそられたというガリアーノが目指したのは、「服装に反映される個性を形作る慣習や出来事を描くこと」。プレスリリースには「服を着るという儀式は、自己を構成する行為。体をキャンバスとして、私たちは内面を表現する外面、つまり感情の形を作り上げる」とある。それを服でどう表現するのか。「感情的な形を物理的に表現する」ためのベースになるのは、コルセットとウエストニッパーでウエストを極端に絞り、腰下や臀部を誇張した丸みのあるシルエット。そこに、ガリアーノは「メゾン マルジェラ」独自の15のテクニックを駆使したアイテムを重ね、キャラクターを描き出す。その制作には1年以上を要したという。