【高校野球】46大会ぶり夏のシード権獲得の川根…その快進撃の裏にあるのは?…27日・春季高校野球静岡県大会3回戦
春季高校野球県大会の3回戦が27日に8試合行われる。春は46大会ぶりに出場した川根は、日大三島と対戦(愛鷹、午前9時開始)する。川根は、20日の星陵との2回戦を制し、前回出場した1978年以来、2度目となる夏大会のシード権を獲得。昨春は県予選、夏は県大会、秋は県予選といずれも初戦で散っていた川根の快進撃の秘密を、静岡支局の伊藤明日香記者が「見た」―。 *** 46大会ぶりにシード権を獲得するなど、旋風を起こしている川根。今年の強さは、犠打数に表れている。延長12回タイブレークの末に、10―9で勝利した20日の星陵戦。14の安打数に対し、犠打数は13もあった。決勝点もバントだった。延長12回1死満塁、藤田奏琉外野手(3年)のサヨナラスクイズでもぎ取った。 今年4月、森下和光前監督(35)に代わって、部長を務めていた野田雅人監督(56)が新たに指揮官となった。新監督が重要視しているのは「最少失点で守れる守備力と、チャンスをつくるために絶対必要な犠打」。星陵戦では野田監督の狙いが、ハッキリと見えた。 もちろん、前監督の“遺産”もある。森下前監督はナインに打力がないため、機動力野球を好んだ。一方で、バスターやプッシュバントなど小技の練習も欠かさなかった。前監督の指導と、現監督の思いきった采配が“融合”したからこそ、46大会前の前回出場時と同じく、躍進を遂げた。 ■町の94%が森林 今春16強入りを果たした中では、環境面でも異色と言える。学校は、約94%が森林を占める静岡中央部の山奥・川根本町にある。都市部への交通手段も恵まれているとは言えない。徒歩5分以内の最寄り駅だった大井川鉄道の駿河徳山駅は、一昨年9月の台風の影響を受けて、いまだに不通の状況にある。 ただ、過疎化の影響を受け地域外から生徒を集める川根は、県立では珍しい寮を完備。加入した1年生4人を含む19人のうち17人が寮生活を過ごしている。“同じ釜の飯”を食べて過ごしていることも、チーム内の結束を高めている。 ■次戦日大三島と 3回戦では、強豪・日大三島と激突する。ただ、ナインに試合前から恐れる様子は見られなかった。星陵戦で、先発し自責2で12回を投げ切った背番号「1」を背負う右腕の風間裕斗投手(3年)は「日大三島に9回を投げ切りたい」と意気込んだ。 指揮官が「バント職人」と信頼を置く主将の真鍋彰汰内野手(3年)は「犠打を戦術の一つとして、相手を揺さぶる野球がしたい」。日系ブラジル人で、長打が持ち味のヒロキ・カウエ外野手(3年)は「川根に、好打者がいるんだと思われるような打撃をし、歴史を変えてやる気持ちでやりたい」と次戦を楽しみにした。 ■78年は4強入り 同校の春県大会での最高成績は前回出場し、シードを獲得した1978年の4強。それを弾みに、同年夏は最高成績となる8強入りを果たした。今年度も春の勢いを、夏へとつなげたい。 (静岡支局・伊藤 明日香) ◆川根高校 1963年に、藤枝東高の川根分校として、静岡県榛原郡に開校した県立校。1966年に藤枝東高等学校から独立し、現校名の川根高になった。生徒数は84人(うち女子32人)。主な卒業生に、元西武投手の山本勝則氏(55)、ロンドン五輪のカヌー日本代表の大村朱澄氏(34)ら。 〇…川根野球部1期生で1978年大会でシード権を決めたOBが、当時を振り返った。島田市で「スポーツショップナイン」を運営する花村昌幸さん(64)は初代監督だった芝田耕吉氏の指導のたまものだと明かす。同氏は、のちに島田商を率いて1998年のセンバツ出場に導いた。「絶対的なエースの下、堅実に点を取り逃げ切る野球。その当時は珍しく細かい野球を徹底していた。犠打もよくしていた」と懐かしみ、「最高成績を更新するのは難しいと思うが、頑張ってほしい」とナインらにエールを送った。
報知新聞社