「藤井(聡太)さんも言ってましたけど…」「結果も内容もすごく悪い」永瀬拓矢32歳が王座戦連敗後、悔やみつつ語った「人間らしさ」とは
藤井さんも言ってましたけど、この将棋は
では永瀬はどうすればよかったのか。 88手目に銀を腰掛けた手では8八の地点に歩を打つ手が有力だと感想戦で調べられたが、永瀬はあまり関心がなさそうだった。 「今後の公式戦では(81手目に)先手が香を打った手の代わりに銀を引く手が指されると思うので、本局の代案は現れないでしょう」 AIでの事前研究が切れて自力勝負になった直後の局面はバランスを取るのが非常に難しい。将棋には流れがあるのだが、そこまでの手順の組み立てをAIに頼っているので、一手一手の意味を深く理解していないとすぐに間違えてしまうのだ。 そうは言っても永瀬ほどの棋士が間違えてしまうのには理由がある。 「藤井さんも言ってましたけど、この将棋は両者ともに自玉にキズを抱えています。だから攻めている時にも自玉を無視できない。それだけ考える材料が増えるんです。先手は左の銀を取られましたが、最下段の飛車がよく守備に利いていますし、1四の角が6九の地点に利いているのが大きい。一方で後手は銀を取れましたが、2一の桂が使えませんし、2二の銀が壁になっている。後手は駒得の実利は取りやすいけど、駒の効率が落ちます」
結果も内容もものすごく悪い…永瀬は再び口を開いた
連敗となった本局をどう総括しているのか。 「難しい将棋でしたが、自分のパフォーマンスがよければよい将棋になったと思います。藤井さんと五番勝負で2局指してみて、結果も内容もものすごく悪い」 そう漏らしてから永瀬は黙った。私は自分から話を切り出すか、永瀬の話を待つか迷い、結果的に後者を選択した。この時点で取材時間は15分ほど。再び永瀬が口を開いてから取材が終わるまでにさらに1時間以上がかかるとは、この時点では想像がつかなかった。 長い夜が本格的に始まった。
人間らしさを獲得したと言えるのかもしれません
前期の王座戦五番勝負で名誉王座の永世称号が懸かっていた永瀬拓矢は第4局で詰みを逃して逆転負けを喫し、藤井聡太に将棋界初の八冠全制覇を達成させた。 それから1年。永瀬は各棋戦で上位に顔を出すも、なかなかタイトル戦には出場できなかった。だが永瀬は王座戦挑戦者決定トーナメントで鈴木大介九段、羽生善治九段という敬愛し尊敬する先輩棋士たちを倒し、挑戦権を獲得した。久しぶりのタイトル戦登場が、昨年に劇的な決着をした王座戦であることに、永瀬は「運命的」という言葉を使った。 誰もが楽しみにしていた今期の五番勝負。だが永瀬は「やりがいはありますが、楽しみではない。命を削り合うのは楽しみではありません」と開幕前に明瞭な口調で言い切った。すべてを懸けて臨んでいたが、開幕2連敗を喫したのである。 第2局の当日夜の電話取材で、永瀬はまず将棋の内容について語った。それから今シリーズの2局を総括し、「結果と内容がものすごく悪い」と自分を斬った。とはいえ、まだ勝負は終わっていない。第3局は9月30日に京都で行われる。肝心なのはこれから永瀬がどうするかだ。しばらく黙った後、永瀬は堰を切ったように話し始めた。 「私には人間らしいところと、そうでないところの両方があります。若手の頃はひたすら将棋だけに没頭していたので人間らしさとは無縁でした。というか、それしかできなかったんです。ただその後、頭がよくなったことで能力が全体的に上がり、自分が抱いている感情を言語化できるようになりました。人間らしさを獲得したと言えるのかもしれません」
【関連記事】
- 【つづき→】永瀬拓矢、電話取材70分超での本音「藤井さんを人間として見てはいけないんです」「これが最後かもしれませんよ」
- 【レア写真】6歳の藤井くん“パジャマ姿”がカワイイ!「永瀬さんの目が真っ赤だった…藤井くんも放心」伝説の王座戦など天才棋士レア写真を全部見る
- 【第1回→】藤井聡太“八冠達成”から1年後の再戦「精一杯頑張りたい」完敗直後、記者の電話に応えた永瀬拓矢32歳の口調は“意外と暗くなかった”…なぜ?
- 「実力としてまだ足りない」藤井聡太“八冠独占”から1年後の王座戦再戦…永瀬拓矢「止まっていた時間を前に」2人の心に芽生える“新局面”
- 【レア写真】6歳の藤井くん“パジャマ姿”がカワイイ!「永瀬さんの目が真っ赤だった…藤井くんも放心」伝説の王座戦…羽生さん畠田さん25歳“美しい和服結婚式”も!天才棋士レア写真を全部見る