せっけんで地域を結ぶ 長崎県壱岐市の暮らしで育んだ品を福岡市で紹介
長崎県壱岐市に工房を設け、島の生活から生まれたアイデアでユニークなせっけんを製造販売するクリエイター草野みゆきさん(58)の作品を紹介するイベントが、福岡市西区の「九大伊都 蔦屋書店」で開かれています。6月13日までの期間限定で、草野さんは「せっけんを通じて壱岐と様々な地域をつないでいけたらうれしい」と話します。 【写真】ACB工房の品々
「人面石」も題材に!
「飾りは少なめにした方が、(光を通すので)きれいに作れます」 5月下旬、イベント会場で開かれたワークショップで、草野さんが参加者らに優しくアドバイスしました。魚の形をしたせっけんを長女(4)、次女(2)と作った福岡市の会社員女性(36)は「子どもたちも楽しそうに取り組んでいます」と笑顔です。 特設スペースでは、草野さんの「ACB(アシベ)工房」が手がける15種類ほどのせっけんや、Tシャツ、ポストカードなどを紹介。島内の「原の辻遺跡」から出土した弥生時代の国重要文化財・人面石をモチーフにした「人面石けん」も並びます。通常はACB工房と壱岐市立一支国博物館のみの取り扱いですが、イベント会場でも特別に販売しています。
新しい場所を求め…
草野さんは東京生まれ、東京育ち。大学卒業後は大手キャラクター企業に就職してテーマパークの企画などを担当しました。 31歳でフリーに転身し、有名紅茶ブランドのパッケージデザインや、人気映画で知られる米国企業関連の商品開発を経験。その後、国内の別のテーマパーク企業に入社するなど、様々な分野で活躍してきました。 しかし2017年、父親や長年飼っていた愛猫と死別し、「これまでと全く関係のないところへ行きたい」と考えるように。移住促進に取り組む壱岐市のことを知り、「やれることがいっぱいある」と翌18年に移り住みました。 島では呉服店だった建物を購入して、DIYで自宅兼工房に改修。博物館で発掘作業のアルバイトも経験しました。
壱岐のことを知って
旅行で痛めた腰を癒やそうと、壱岐の湯本温泉に通い始めたのが、せっけん作りにつながりました。備え付けではなく、好みの品を持参するようになった頃、友人から道具を譲り受け、せっけんの製造にチャレンジ。21年に販売を始めると、豊かな発想から生まれる品々が評判を呼びました。 人面石けんは、発掘のアルバイトが縁で完成。「旅のひとシリーズ」と呼ぶ3品(各税込み1650~2200円)は▽島で育つユズ▽特産の「壱州(いしゅう)豆腐」▽湯治で通った湯本温泉の成分――の素材を生かして作っています。ハロウィーンに合わせて「目玉」を模したせっけんを作るなど、自由なひらめきも大切にしています。 草野さんのもとには、商品づくりの相談が長崎県外の事業者からも寄せられるそうです。「遠方とも新たに関係をつくり、壱岐にちなむ商品をそこにも置いてもらったりして、壱岐を知ってもらう機会を増やせたら」と草野さん。「せっけんを通じて各地を結び、活動の幅を広げていきたい」と語ります。
◆ポップアップショップの概要 【場所】九大伊都 蔦屋書店(福岡市西区九大新町5-1 いとLab+) 【会期】5月21日(火)~6月13日(木) 【備考】壱岐への移住・観光に役立つ資料の展示コーナーも併設
読売新聞