“にじさんじの夏”に欠かせない男が帰ってきた 復活を果たした舞元啓介の足跡をたどる
バーチャルタレント事務所・にじさんじによる人気企画『にじさんじ甲子園2024』が、2024年8月10日から12日にかけて開催される。 【画像】映画『シャイニング』のように登場してミリー・パフェに壁ドンをする舞元啓介(この後ハグ、お姫様抱っこをされる) 本大会は、2024年7月に発売された『eBASEBALLパワフルプロ野球2024』内のゲームモード「栄冠ナイン」を3年間プレイし、にじさんじに所属するタレントを基にしたオリジナル選手を作成してチームづくりにはげみ、その後オリジナルチームとして戦わせようというものである。 個人VTuberとして活動している天開司が2019年8月に開催した企画『Vtuber甲子園』を前身としたこの大会は、2020年に『にじさんじ甲子園2020』として開始。今年で5回目を迎え、毎年大きな盛り上がりをみせてきた。 そんな大会の主催者に名を連ねるのは、発起人でもある天開司ともう一人、にじさんじに所属している舞元啓介である。にじさんじのなかでも指折りのスポーツ好きとして知られる舞元ならではの企画であり、豊富なメンバーを擁するにじさんじのタレント力を十二分に活かす大会として非常に人気を集めることとなった。 そんな舞元だが、昨年2023年8月18日の配信にて8月31日をもって無期限活動休止に入ることを発表。『にじさんじ甲子園2023』の本戦を終え、翌日にはエキシビションマッチが催されるなかでの発表は、多くの反響を生むことになった。 翌日開催されたエキシビションマッチでは、出演した監督陣から舞元にねぎらいの言葉が贈られ、称賛する声が多数上がったのは言うまでもない。2023年9月1日以降、舞元は配信活動を休止し、SNSアカウントからもログアウト。インターネットやSNSを完全にシャットアウトして生活を送ることになった。 彼が配信活動を休止してから10ヶ月ほどが経った2024年7月10日に今回の企画がアナウンスされ、同時に舞元の主催継続も示され、数刻もまたずして本人から復帰報告がなされた。 今回は、舞元啓介のこれまでをすこし振り返りつつ、休止期間から復帰に至るまでの動きをすこし追いかけてみようと思う。 2022年10月1日に、筆者は当連載において舞元にまつわる記事を執筆している。その際、彼について以下のように記している。 「器量・度量・懐の深さで来るもの拒まず、しっかりとエンタメへと打ち返していくそのスタイルは、運営スタッフ・ファン・同業者やメンバーからも大きな信頼を勝ち得ている」 実際、2022年末以降の彼は、拡大していくにじさんじの波の中でさまざまな企画や配信を続けていった。2022年FIFAワールドカップの同時視聴枠、ならびにABEMAでの公式配信に出演、12月ということでクリスマスに合わせた企画にも数多く出演した。 年末から年明けにかけては、ローション相撲の反響を受けて立案された『第一回 にじさんじローションチャンバラ選手権』を公開。『新春!にじさんじ麻雀杯2023』では抽選会・大会中の実況・解説を予定していたが、途中で体調不良となってしまい欠席・棄権することとなった。 2月には『第二回にじさんじバーチャルパチンコ大会』の実況・解説、3月には『2023 ワールド・ベースボール・クラシック』の応援配信と大会関係の実況解説などの配信に力を注いだ。 こうしてみるとわかるが、2022年末から2023年に入ってからは、大手企業が関連した公式企画・大会にまつわる配信や、自身が好きなスポーツ大会にまつわる応援配信が多い。6月には主治医から進言されたこともあり、7月に入ると先述した『にじさんじ甲子園2023』にまつわるドラフトやまとめ配信をおこない、8月末に活動休止となったのだった。 投稿用のSNSや仕事用の連絡ツールから完全にログアウト、ストレスやプレッシャーから解放された舞元啓介。その後は彼が今年7月にアナウンスをするまで、SNSやネット上には彼自身のメッセージなどは浮かんでこなかった。 とはいえ、復帰後に舞元自身が語ったところによると、活動休止中にもさまざまな場面でにじさんじの同僚らと会ったり、話したりすることが多かったようだ。時が経つにつれて、少しずつ配信中に「舞元」の名前が出てくることになり、それがそのまま近況報告……いわゆる「生存報告」になっていたのだ。 ここで、にじさんじの面々からの「生存報告」を振り返ってみよう。 町田ちま、黒井しば、夢追翔3人による「黒夢町」が月イチで催しているコラボ配信では、お便りを募集してそれに答えるという企画を行っており、2023年9月13日におこなわれた配信回で、舞元が「ヨーグリーナ静岡」を名乗ってお便りを送っている。 3人の新衣装や黒井のフリフリ衣装を提案する内容で、3人のトークも盛り上がったのだが、町田が「ところで、このお便りを送ったのはだれ?」と話を振ると、実は舞元から送られてきたお便りであったことが明らかになった。 2023年10月8日には長尾景と西園チグサが、ゲーム企画『ながおちぐ甲子園』を配信。『実況パワフルプロ野球2022』を使った対戦をしようと考えていたため、西園が舞元に連絡を取り、操作設定などのレギュレーションをレクチャーしてもらったそう。以前から舞元と仲の良い西園は、「とても元気そう!」とうれしそうに報告をしていた。 さらに、西園チグサが『遊戯王マスターデュエル』を配信でプレイした際、「舞元さんに事前に教えてもらった!」と多少の知識・メモを見せ、配信の序盤では舞元にアドバイスをもらいながらプレイをするという展開に。じつは活動休止のあいだも2人は定期的に話をしており、「いつ復活してくれるの?」と何度も聞く西園に対して、舞元が「復帰を催促してくるのはお前だけだよ」と返す一幕があったようだ。 2024年1月上旬に催された『新春!にじさんじ麻雀杯2024』で、社築が急病を患ってしまい、司会役がルイス・キャミーとジョー・力一の2人のみの状況となってしまった。その状況を配信で見ていた舞元から「マジでヤバいなら駆けつけるから!」とメッセージが送られていたとのこと。 それをみたルイス、力一、ヘルプに入った天宮からは「休め!」と逆に彼の体調を案じるボイスメッセージが返された。彼自身、2023年度大会で急病を患って休んでしまったことを踏まえて、「ここで汚名返上」という気持ちでメッセージを送ったのかもしれない。 2023年8月から『ブルーアーカイブ』をプレイしはじめたアンジュ・カトリーナには、先にスタートしていた先輩として攻略方法を教え、ゲーム内フレンドとして様々なやり取りをしていた。 当時、アンジュのたった一人のゲーム内フレンドであった舞元。アンジュが「誰だと思う?」とリスナーに答えを求め、名前が明かされた際にはリスナーから驚きのコメントが多く送られた。その後も何度か舞元とのやり取りを楽しげに語るアンジュの元には、舞元の安否を聞こうとするコメントが増えることにもなった。 そんな舞元の休止期間中、2024年2月には椎名唯華も『ブルーアーカイブ』をプレイしはじめており、フレンドがまったくいないためアンジュと同じように舞元とゲーム内フレンドになった。にじさんじには2021年2月の同作ローンチ当初からプレイしていた人もおり、なかにはPR配信としてプレイしていた面々もいるが、舞元もゲームローンチ当初にPR配信としてプレイしていたひとりだ。 ちなみに、椎名がプレイしはじめた2月に同作は3周年を迎えており、椎名を筆頭にシスター・クレア、ルイス・キャミー、星川サラ、白雪巴、レイン・パターソン、五十嵐梨花、栞葉るりなど、女性タレントを中心に『ブルーアーカイブ』をプレイするメンバーが急増。配信ではプレイこそしていないが、舞元のように配信外で楽しんでいる「先生」が多いようだ。 緑仙が2024年1月末ごろから4月にかけて活動を休止した際には、「早い段階で舞元から『旅行は良いぞ』って連絡があった。『大丈夫?』とかじゃなくね」とメッセージを受け取ったことを明かしている。 天宮こころは雑談配信の際に「葉加瀬や新人がポケカ(ポケモンカード)に信じられないほどハマってる」という話題をあげ、舞元が「これがマジでおすすめ!」とにじさんじのDiscordサーバーでオススメのサプライ(カードスリーブ)を投稿していると話し、元気そうな舞元を見て「なにしてるんだ、このオジサン? と思っていた」と語った。 鷹宮リオンも舞元について雑談配信で触れており、「『いま○△×にいるんだけど、この辺で良いご飯屋さんない?』って聞いたら、2~3個URLを送ってくれるよ。食べログおじさんだね」と、小まめに連絡を取っている様子を明かした。 また、事務所で会ったこともあると明かしており、他のメンバーを含めて食事をした際のエピソードも語ってくれた。ただ、話題が主に風俗に関する話だったせいで「舞元との話題って風俗の話しかなかったなって」と振り返るハメに。とはいえ、鷹宮も「新しいとこ行ったりしないの?」「バレたりしないの?」と興味津々で聞いていたようだ。 じつは休止期間中に姿を見せたことが1度だけある。NIJISANJI ENで活動するミリー・パフェ(Millie Parfait)の3Dお披露目配信にサプライズゲストとして出演したのだ。 前々から自分の3Dお披露目に出演に出てほしいと思っていたミリーだったが、活動休止のことは当然知っており、休みを優先してほしいと考えていたそうだ。だが同期であるEndou Reimu(遠藤霊夢)とEnna Alouette(エナー・アールウェット)とマネージャーと4人で会話していた際に「せっかくだから声をかけてみよう」と思い立ち、勇気を出して声をかけたところ「Yes」と返事がきたそうだ。 実際におこなわれた3D配信では、ミリーは「壁ドンしてほしい」と要求するなど、舞元への愛があふれることとなる。ハグを求めてみたり、舞元“を”お姫さま抱っこをしてみたりと、“舞元推し”を公言してきた彼女の“ビッグラブ”をぶつけた。なお、普段はなかなかされない扱いに、舞元は終始タジタジとなっていた。 ほかにも個人VTuberとして活動している竹谷竿丈や天開司らとともに草野球を楽しでいるのをSNSで報告されたり、「舞元さんがもしも復帰したら……」と何人もの面々が彼の名前をあげて雑談をしていたりと、リスナーからは「たしかに活動休止期間だったが、不思議と不在を感じなかった」という声があがるほどであったのだ。 ここまでの話を踏まえると、舞元啓介が復帰配信に「風俗失敗談トーク」を企画したというのも不思議と納得ができる。復帰配信でこのトピックについて話すとマネージャーに伝えたところ、当然運営から「普通の雑談配信のほうが良いのでは?」とやんわりとストップがかかったのだが、それでもゴリ押して配信したのだという。舞元の前掛かりっぷりがよく伝わってくる。 最大視聴者25,000人を超える人気配信となったこの企画。後日長尾景は舞元の復帰配信に触れつつ、自身のファンに動揺していた方を見つけたと語った。 「なんか面白いのがさぁ、フロンターレからオレを知って(※Jリーグコラボで長尾は川崎フロンターレを担当)にじさんじを知った人が、動揺していて笑った」 「たぶんオレとか甲斐田とか弦月、VΔLZやVOLTACTIONがオススメに出てきて、だんだんわかってきたと思ったら、なんだこれは!? VTuberはアイドルじゃないのか!? どうやら違うらしい……って書いてあってさ。そらそうだ(笑)」 ファンだけでなくにじさんじの同僚タレントもこの配信を見ており、海妹四葉は途中まで視聴したものの、「あっ……へぇ? はぁ~ふ~ん? そういうこともあるんだ……へぇ~~」と楽しみつつ、スッとスクロールして違う配信を見に行ったようだ。 「いや、そりゃ興味は津々だろうよ! だって海妹が交わったことのない世界だから、そこはさぁ。へぇ~~ってなるよね」 海妹は焦りながらこのように話しているが、実際配信内で届いたお便りには女性からの質問も届いており、この配信をみていた視聴者の男女比は意外にも女性が20%を超えていたという。 にじさんじの男性陣に女性ファンが厚くつきはじめているというのはファンの間でも話題になっていたが、まさかこの配信でこのような結果となるとは。ふだんの生活では口にしづらい話題や興味を知れる場所=インターネットという、ある種“あるべき形”で、多くのリスナーの興味をひいたといえよう。 復帰数日後には、でびでび・でびる、アルス・アルマル、葉山舞鈴とのコラボグループ・SilverDevilSでコラボ配信を実施したり、盟友・力一とのコラボ雑談企画『舞元力一』を配信したりと、旧友らとの久しぶりな配信で、元気よく楽しむ舞元の姿を見ることができたのだった。そしてその後は『にじさんじ甲子園2024』の主催として、8人の監督それぞれの配信をチェックしつつ、大会の行く末を見守った。 また、活動休止中にアンジュと椎名がフレンドになったことを明かしていた『ブルーアーカイブ』に関しては、7月27日に3.5周年記念のPR配信を担当。同作のキャラクター・プレジデントのモノマネを披露したり、ゲームの概要を説明をしたりと、ゲームの魅力を存分に伝えていった。 ホーム画面に設定していた舞元の推しキャラ・杏山カズサに関して感嘆としたニュアンスの声で語ったのを皮切りに、流れるキャラクター映像の一つ一つを息を呑み、すこし遠い過去を振り返るように、アレやコレやと感想を語る舞元。その話し方や内容一つ一つから、同作への思い入れの強さを感じられた。 こうして活動をふたたびスタートした舞元だが、オーバーワークに関しては気をつけてほしいところ。 「1年近い活動休止は充電期間となり、配信で元気よく笑顔を見せているから舞元の体調が良くなったのだ!」と解してしまうのは簡単だが、長くにじさんじを追いかけていたり、VTuber~バーチャルタレントシーンを長く見ている方ならば、少しばかり懸念を抱いてしまうこともあるだろう。 数日前まで元気良く配信をしていたかと思えば、突然の体調不良を訴えて活動休止となってしまう。舞元に限らない話だが、このシーンにおいてそんな出来事が頻発していることを知っていれば、「配信上で見せている姿」だけでは軽々しく「元気になった」と言いづらい部分もある。復帰直後ならば、特にそうだ。 現況として舞元啓介が元気に配信している状況がとても喜ばしい状況なのは言うまでもない。この期間中に不在を惜しむ声はリスナーだけでなく同僚らからもあがっており、「舞元さんが帰ってきたら不憫総会をしよう」「舞元さんが戻ってきたらド葛本社とガチ屑農家で対決したいんだよね」など、さまざまなメンバーが「もしも舞元が復帰したら」と復帰を心待ちにしていたようだ。 もしも前述のような企画が実現すれば、話題で持ちきりになるのは言うまでもない。「どんな仕事でもオファーは断らない」という漢・舞元啓介、自身の体調に十二分な注意を払いつつ、今後もさまざまなエンタメを見せてほしいところだ。 まずは、本日から開催される『にじさんじ甲子園2024』での活躍を楽しみにしたい。
草野虹