NASA探査機ジュノーが撮影した木星の衛星エウロパ 画像から新たな事実も判明
いっぽう、JunoCamの画像を分析したアメリカ惑星科学研究所(PSI)のCandy Hansenさんを筆頭とする研究チームは、予想されていた線条やブロック状の氷に加えて、険しい崖に囲まれた幅20km~50kmの窪地を複数確認しました。こうした窪地はエウロパにおける真の極移動(true polar wander ※)にともなって形成されると考えられていて、その影響を示す地形的な特徴がエウロパの南半球でマッピングされたのは今回が初めてだとされています。 ※…地殻やマントルが回転することで天体の表面と自転軸の交わる場所(北極や南極)が移動する現象のこと。エウロパの場合は氷の外殻が内部海によって岩石のコアから切り離されているために真の極移動が起こると考えられている。 また、HansenさんたちはJunoCamの画像に写っていた2つのクレーターについても分析を行いました。その結果、直径約22kmの「Gwern」が実際にはクレーターではなく交差する線条によって作り出された準円形のパターンであることを確認したといいます。エウロパで命名されているクレーターはGwernを含めて41個ありますが、研究チームはエウロパがその1つを“失った”と表現しています。 なお、2023年4月に探査機が打ち上げられた欧州宇宙機関(ESA)主導の木星系探査ミッション「JUICE(ジュース)」はエウロパ・ガニメデ・カリストの3つの衛星を探査目標としています。また、NASAが2024年10月に探査機を打ち上げる予定のミッション「Europa Clipper(エウロパ・クリッパー)」ではエウロパの内部海の探査などが行われる予定です。ジュノーによるエウロパの観測で得られた貴重な知見は、今後の探査ミッションでも役立てられることになります。 Source NASA – NASA’s Juno Provides High-Definition Views of Europa’s Icy Shell Becker et al. – A Complex Region of Europa’s Surface With Hints of Recent Activity Revealed by Juno’s Stellar Reference Unit (Journal of Geophysical Research: Planets) Hansen et al. – Juno’s JunoCam Images of Europa (The Planetary Science Journal)
sorae編集部