1982年発売のロングセラー『日本語の作文技術』は戦略商品
1982年に発売されたロングセラー『日本語の作文技術』(朝日文庫)をご存知だろうか? もともとは1974年に朝日カルチャーセンターで行われた本多勝一氏の講義をまとめて単行本にした著作で、加筆修正を経て文庫本となった。その本がいまなお売れ続け、新しい読者を獲得し続けている。
同書は、日本語の書き方についてまとめた書である。文章のどこに読点を打つべきかという指南をはじめとし、修飾語と被修飾語の関係はどうあるべきか、適切な修飾語の位置はどこかといった事例について丁寧に記している。「技術」的な実例を豊富に挙げて一冊の本にまとめている。 アマゾンのベストセラーランキングでは3ケタであることが多く、「朝日文庫」カテゴリでも上位3位にいることがほとんどだ。品切れになることも多く、「通常2~3週間以内に発送します」の表示が出ることもよくある。小説の名作ではなく、どちらかというと実用書の部類が30年以上も経っていまなお売れ続けている例はそう多くない。 とある都内の大型書店の店員は「長く売れ続けています。大学の先生などにすすめられて購入する人が多いですね」と話す。同書店では、姉妹編の『実戦・日本語の作文技術』(朝日文庫)とともに、平積みにして販売していた。これほどにも長く売れているのは、過去に読んだ人が人にすすめているという世代や時代を超えた口コミによるところも大きい。
『日本語の作文技術』の発行元である朝日新聞出版によると、現在、同書は46刷、63万部。朝日文庫編集部では「わかりやすい日本語を伝えるためのものとしては秀逸」と評し、「長く売り続けていく戦略商品」として位置づけている。 同編集部は、2014年夏に東進ハイスクール講師・林修先生の推薦文を記した帯を同書に巻いてプロモーションを図った。「国語を教える有名な人なので推薦をお願いした。本多勝一さんの名前を知らない若い世代にもアピールしたかった。私自身も大学時代に購入し読んで勉強になった」と話す。