26年ぶりに復活する人気格闘ゲーム『餓狼伝説』新作の制作秘話をSNKプロデューサーが激白!
’90年代に社会的ブームとなった「対戦格闘ゲーム」が令和の今、再び世界各地で熱い盛り上がりを見せている。昨年、長く幅広い層に人気のあるシリーズ『ストリートファイター』シリーズ(カプコン)、『鉄拳』シリーズ(バンダイナムコエンターテインメント)の新作が発売されて大きなヒットとなり、ストリーマーの配信で若い層を取り込んで広がっているのだ。 激しい……!人気女性キャラ「ほたる」VS新キャラ「プリチャ」の美脚バトル さらに近年注目される「eスポーツ」においては、この夏にサウジアラビアで開催される世界大会が賞金総額6000万ドル超(約92億円)という規模で開催され、その予選が行われている今、シーンは加熱していくばかりだ。 そんな中、格闘ゲームメーカーの雄であるSNKが、今でも根強い人気を持つ『餓狼伝説』シリーズの新作を26年の時を経て復活させることとなった。由緒あるレガシーを持ちながら、現代の対戦格闘ゲームカルチャーを牽引し続けているSNKの、製作全体をチーフとして統括している第一ソフトウェア開発事業部プロデューサー小田泰之氏に“格ゲー最前線”を解説してもらった。 ◆26年の時を超えて「伏線回収」 ――『餓狼伝説』シリーズとは、どのような歴史を持つゲームなのでしょうか。 「第1作の発売年が1991年。’90年代に対戦格闘ゲームブームがあり、その中でブームの火付け役である『ストリートファイター』シリーズに対抗しうるIPのひとつが『餓狼伝説』シリーズーーというのが、当時のゲームセンターでの雰囲気だったと思います。ゲームセンターだけでなく、家庭用ゲーム、アニメ、また他社さまのゲームへのゲスト出演などで『餓狼伝説』の世界は広がっていきました。そして、シリーズ前作『餓狼-MARK OF THE WOLVES-』(以下、MotW)が1999年に発売され、さらにその続編『餓狼伝説 City of the Wolves』(以下、CotW)が、’25年初頭発売予定として開発を進めています」 ――なぜ前作から26年も間が空いたのでしょうか。 「『餓狼伝説』の新作を、という要望は、日本のみならず、アメリカやメキシコ、ヨーロッパ各国からもたくさんいただいていて、やろうとは思っていたんです。実はもう何度も何度も〝やりたいですね〟と言い続けてきたのですが、会社の形が変わったり、スタッフの変遷があったりするなかで、『THE KING OF FIGHTERS(以下、KOF)』や『サムライスピリッツ』(以下、サムスピ)などの人気シリーズの最新作を作ることができた。それで今回、ようやく順番が回ってきた、という形です。前作の『MotW』では回収できないままになっていたストーリー面での伏線は今回、しっかり区切りをつけます」 ――今作はどんなキャラクターが参加を? 「『MotW』の続編ですので、前作での登場キャラはもちろん、まったくの新キャラ、また〝おっ?〟と思ってもらえる、サプライズとなるキャラもいます。発売後の追加ダウンロードコンテンツとしての登場も予定しているので、期待していてください」 ――キャラの選定やキャラの製作などはどうやって行っているんですか? 「『CotW』に限らないのですが、ドラマの立ち位置と遊びの2パターンを考えています。物語の中のキャラクターの個性から技を考えていく、というのが一つ。ゲームとしてデカいキャラがほしいならば投げ技を得意にしようかーーと遊びから考えるのがもう一つ。『CotW』の特徴は、ドラマの立ち位置から生まれたキャラクターの割合が多いこと。それがこのシリーズの特色であり、ユーザーの皆さんに長く愛してもらえている部分なのかなと思います」 ――今作のコンセプトを一言でいうと? 「ウチでいうと、チーム戦で戦う『KOF』のイメージが強いところがあると思いますが、それとは異なる、1対1の対戦格闘ゲームの決定版、というところですね。システムも奥深くかつ、プレイヤーそれぞれのスタイルで遊べるものとなっています。〝スマートスタイル〟という、初心者でも遊びやすい操作システムも搭載されています。また、対戦格闘ゲーム慣れしていない方にもカジュアルに遊んでいただけるよう、また1人でも楽しんでいただけるよう、さまざまなコンテンツを入れています」 ――逆に、競技的なeスポーツへの取り組みの計画はあるのでしょうか。 「過去2回〝SNKワールドチャンピオンシップ〟という大きな大会を開催しており、来年は『CotW』を種目として加えられたらと考えております。他にも今のeスポーツ界は大会の数が増えていますので、各大会に積極的に参加して、大会運営面でも、賞金面でも、eスポーツを最大限に盛り上げていこうと考えておりますので期待してください。新作ですのでスタートラインがみんな同じですから、誰にでも同じだけチャンスがある、といえるのではないでしょうか」 ――先日、人気キャラクターのテリー・ボガードを象徴する超必殺技〝バスターウルフ〟の技動画が発表された時、オールドファンから「これじゃない!」「前とは演出が違う!」という声があがるという騒動がありました。 「あれですか……(笑)。僕も『今、この動画を出したら荒れるな』とは思ったのですが、やっぱり荒れてしまいました。申し訳ありません! 今はしっかりと修正を行っています。バスターウルフの演出だけでなく、全体のブラッシュアップを常に行っています。そこもご期待ください」 ――現在はどれくらいの完成度ですか? 「進捗率が何%とはいえないのですが、順調に進んでいます!(笑)。対戦格闘ゲームというと、少し難しいイメージがあるかもしれないですけど、かっこいいヤツ、個性的なやつ、綺麗な子、かわいい子が、活躍する、わかりやすいゲームですので、ぜひ遊んでいただけたらと。 他にもSNKは人気シリーズがあります。『龍虎の拳』シリーズ、『サムスピ』シリーズといった作品を展開し、そういった各シリーズから、キャラクターたちが集大成として『KOF』に集結する、という風にやっていきたいですね。昔のように1年で何本もタイトルを出せるわけではないので、長くお付き合いをお願いします。今後、ネットでもイベントでも、次々情報を出していきます。公式サイトやSNSをちょくちょくチェックしてもらえたら幸いです」 来年初頭、新しい対戦格闘ゲームのビッグタイトルが動き始める。ジャンルのファンはもちろん注目済みであろうが、今から対戦格闘ゲームをはじめたい、eスポーツの世界で脚光を浴びたいという方には、大きなチャンスとなるのではなかろうか。これからに注目だ。 取材・文:来栖美憂 くるす・みゆう フリーライター。人文、社会問題、サブカルチャーなどを主な守備範囲とし、雑誌・新聞・ネット等、メディアを問わず、記事の取材・執筆を中心に活躍。著書多数。
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