魚がぐるぐる回り続けて死ぬ謎の奇病が拡大、「あちこちで魚が死んでいる」、米フロリダ沖
犯人はシガテラ毒?
人間のシガテラの症状は、嘔吐、吐き気、神経症状だ。以前の実験では、シガテラ毒入りの餌を食べた魚が活動過多や痙攣などの神経障害を示すことが確認されている。 科学者たちは、実験室の魚を、回転する魚が観察されているビッグ・パイン・キー島の海域で採取した水に入れる計画だ。これらの魚が6~12時間以内に回転をはじめたら、海水を検査して毒素の有無を調べる。その結果を、キーズ諸島の海水と同じ濃度の毒素を加えた人工海水に魚を入れる別の実験と比較する。そうすれば、キーズ諸島で観察された魚の行動に、これらの藻類と毒素が関与している可能性を裏付けたり除外したりできるとパーソンズ氏は説明する。 非営利団体「オーシャン・ファースト研究所」のチームも、魚が回転する現象が報告されるより前に採取したサメの血液サンプルと、最近採取した血液サンプルを比較する予定だ。その目的は、奇妙な行動が見られたサメの健康への長期的な影響を把握し、この疾患の発症のしくみを調べることにあると、同研究所の研究・保護活動ディレクターであるクリス・マリノウスキー氏は言う。 「あちこちで魚が死んでいます」と、パーソンズ氏は言う。「今回の異変は、通常の原因では説明できません。それが奇妙なところなのです」
絶滅危惧ノコギリエイに迫る危機
今回、特に心配されているのは、沿岸の開発と混獲による個体数の減少を受けて2003年に米国の絶滅危惧種に指定されたスモールトゥース・ソーフィッシュだ。スモールトゥース・ソーフィッシュは世界に5種しかいないノコギリエイ科の魚で、米国海域にはこの1種しか生息していない。 米フロリダ州立大学の魚類生態学者で、スモールトゥース・ソーフィッシュを研究しているディーン・グラブス氏によれば、3月上旬の時点で21匹のノコギリエイの死体が打ち上げられ、最大で60匹が苦しんでいるという。3月13日には、約320km北のボイントン・ビーチでも苦しそうなノコギリエイが目撃された。 本当にこれほど北まで病気が広がっているとしたら、非常に気がかりだとグラブス氏は言う。「ノコギリエイのような大型の魚がこれほど多く死んでいるのは、明らかに大きな問題です」 体長4メートル弱にもなるスモールトゥース・ソーフィッシュは、歴史的には大西洋の両岸に生息していたが、現在ではバハマと米国の2つの群れしか残っておらず、米国の群れの方が大きい。「つまり、この種の回復は米国の群れに大きく依存しているのです」とグラブス氏は言う。 「この現象が1年もすれば終わることなのか、これまでにも同じようなことがあったのか、それとも壊滅的な結果になるおそれがあるのか、手がかりはまだつかめていません」と氏は言う。「この現象が多くの人に知られるようになり、良い知恵が集まると良いのですが」
文=Bethany Augliere/訳=三枝小夜子