「動画配信だけが唯一の居場所だった」41歳、のめり込んだ「迷惑系」 焼き肉店の卓上に土足、罪に問われた被告が譲れなかったもの
憧れていた芸能界には、手が届かなかった。たどり着いた先はインターネット上で過激な動画を公開して稼ぐ「迷惑系配信者」だった。「配信だけが唯一の居場所だった」。東京都内の焼き肉店の卓上に土足で上がり騒いだとして、威力業務妨害罪に問われた男性(41)は法廷でもなお、動画配信にこだわる姿勢を崩さなかった。(共同通信=助川尭史) 【写真】わが子に下剤入りアイス食べさせ苦しむ映像投稿 フォロワー560万人のユーチューバー
▽過激動画で何度も炎上、自称「インフルエンサー」 今年8月、東京地裁で開かれた初公判。ダークスーツに身を包み被告席に座った男性は、落ち着かない様子で辺りを見回していた。配信動画では明るい金色だった髪は黒く染まっている。裁判官から職業を尋ねられると「インフルエンサーです」としゃがれた声で答え、起訴内容を認めた上で事件に至る経緯を語った。 高校中退後、芸能界を目指したが挫折。職を転々とする中、動画配信を始めた。当初はダンスやファンとの交流がメインだった内容は次第に過激さを増していく。軽自動車を無免許運転、交番に無断で侵入―。警察に逮捕される事態も何度も引き起こした。だが、ネット上で批判を集める「炎上」を繰り返すたびに注目は集まった。交流サイト(SNS)のフォロワー数は15万人を超えるまでになった。 ▽焼き肉店で酩酊生配信、店には苦情殺到 今回の事件が起きたのは昨年8月の夜のこと。男性は、別の配信者がいた東京都渋谷区内の焼き肉店を訪れる様子を動画配信していた。当時、アルコール度数の高いストロング系酎ハイや、ウオッカを何本も飲んでいて酩酊状態の中、この配信者が動画配信プラットフォームの規約に違反する音楽を携帯電話で流し始めた。「アカBAN(アカウント停止)されてしまうと思い、携帯を奪って止めようと思いました。酔っぱらって周りが見えてませんでした」。大声を出しながら土足で卓上を暴れまわる行為はそのまま生配信された。店には苦情の電話が殺到。2日にわたる消毒作業を余儀なくされた。