【インドネシア】来年は緩やかなルピア安=MUFG経済講演
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の三菱UFJ銀行は17日、2025年の対米ドルのルピア相場について、1米ドル=1万5,300~1万6,500ルピアの範囲で推移するとの見通しを示した。米国が利下げに慎重であることやインドネシアの経常収支が赤字に再定着したことなどからルピア高にはなりにくく、緩やかなルピア安傾向になると予測した。 三菱UFJ銀行ジャカルタ支店は同日、首都ジャカルタで「2024年度経済講演会」を開催した。第1部で「外国為替相場の展望」と題して講演した、三菱UFJ銀行のグローバルマーケットリサーチの井野鉄兵チーフアナリストは「今年はルピア高が一時進行するも米国の景気が堅調であることを背景に再びルピア安になった」と指摘。ただ、年後半には米国がインフレの落ち着きからようやく利下げに踏み切ったため「ルピア安が急激に進行していくという展開ではなくなった」と説明した。 また、来年にトランプ次期米大統領が就任後に追加関税を課せば、米国でインフレの加速が見込まれることから米連邦準備制度理事会(FRB)は金利の引き下げに慎重となり、急激なドル安にはなりづらいと指摘。このためルピア高にもなりにくいとした。 またインドネシアでは経常収支が再び赤字に陥っていることや、トランプ政権下で資源価格が下落して輸出額が減少し、貿易収支が赤字となればルピア安圧力がかかることから、ルピア高にはなりにくいとの見方を示した。 ただ、米国の追加関税は宣言通りには実行されない可能性もあり、物価が安定していれば来年にかけてもFRBは緩やかなペースで金利を下げていくとみられるため、急激にルピア安が進行することもないとの見方を示した。 ■拡大した新政権、意思決定の混乱懸念 第2部では、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科の見市建教授が「プラボウォ政権の展望」と題して講演した。見市氏はプラボウォ・スビアント大統領が当選した要因について、ジョコ・ウィドド前大統領からの支持のほか、プラボウォ氏自身の柔軟性を挙げた。今回の大統領選で同氏は周囲の意見を聞き入れ、自身が妥協することもあったといい「こうした自らが妥協し、柔軟に対応することでうまくいった成功体験は今後のプラボウォ政権を占う上でのキーになる」とした。 また、新政権では閣僚ポストが増加したことによって、許認可の複雑化や予算の増加による財政の悪化、意思決定の混乱、指導力の問題を今後起こすとの懸念を示した。 ジョコ路線の継承を掲げて当選したプラボウォ氏だが「今後は徐々に自立を図っていく」とも指摘。最近では、ジョコ政権下で施行された雇用創出法にある最低賃金上昇率の計算式を変えるなど、徐々にジョコ路線を修正していく意図がみえているほか、新政権のポピュリズム色が表れてきているとした。