JT総会で株主が問うた「ロシア事業継続」の難題、ロシアとウクライナに工場を持ち事業継続のジレンマ
「ロシア事業は現状のままやっていけるのか、不買運動が起こったりはしていないのか」 【画像】2018年から舵取りするJTの寺畠社長は、1989年入社の生え抜き 3月22日に開かれたたばこ大手・JTの株主総会。剰余金の処分、資本準備金の額の減少、取締役10名選任、監査役1名選任の4つの議案はすべて承認された。10時に始まった総会は11時28分に終了し、会場の出席者数は684人だった。 昨年の総会は、香港の投資会社であるリム・アドバイザーズから、JTの上場子会社である鳥居薬品への天下りの禁止や自己株式の取得などが提案され、否決されていた。今年は株主提案はなく、議事は粛々と進行した。
ただし株主が強い関心を寄せたのは、長引く戦争の影響が懸念される、ロシア事業の見通しについてだった。 ■直ちに事業停止せざるをえない状況でない ロシア事業については事前に質問が寄せられ、質疑応答でも冒頭から3問連続で株主が質問に立った。総会では以下のようなやりとりがなされた。 ――ロシア事業の見通しについて教えてほしい。 寺畠正道社長 ロシア事業は2023年度のグループ全体の売上収益に占める割合で約10%、調整後営業利益で約24%だった。2024年度の通期見込みではそれぞれ約9%、約21%を占める。
国内外における各種規制や制裁措置を遵守をした上で事業を継続しており、現時点で製品在庫や原材料の確保の観点から直ちに事業停止せざるをえないような状況ではない。 経営の分離を含めた選択肢についても並行して検討を続けている。各国の制裁、ロシア国内の法制度が頻繁に変更されており、より慎重な検討が必要になる。 ――ロシア事業は現状のままやっていけるのか、今後の方針は? 寺畠社長 今はビジネスを継続することが可能な状況にある。来年、再来年以降も確実に継続できるかというと100%できるとは言えないが、継続すべく努力をしている。
われわれもロシアに4000人を超える社員がいる。社員、顧客、株主、社会からの要請、このバランスをとりながら、どのような形でロシア事業を継続するのか、最悪、切り離すかを検討していく。 ――ロシア事業を継続していることで、欧州等で不買運動などは起きていないのか? 加藤信也・JTI(海外たばこ事業の子会社)副CEO 現時点で不買運動等が起きているということはない。しかしながら、不買運動も含めて支障をきたす可能性も排除できない。グループ全体としてロシア事業の継続が大きなネガティブな影響を与えることがあれば、それを考慮して継続の可否を判断する。